Ep.117
「五ヶ所小梅(ごかしょこうめ)」は南伊勢町で原木が見つけられて以来この地で栽培されており、毎年5月中旬から6月上旬までのわずかな期間しか流通しない。
特徴は「果肉が厚く、漬け上がりの鮮やか」なことで、「五ヶ所湾から吹く潮風が小梅の生育に適度なストレスを与え、良質な果実を育む」とのことだ。
「みえの伝統果実」に選定されている4品のうちの一つだ。
さっそくこの食材の特徴を活かした料理を考える。
しかしながら、梅干し・梅シロップ(梅ソーダ)・梅酒くらいしか思い浮かばない。自分の着想の乏しさを認識つつもベーシックなこの3品に取り組む。
1. 五ヶ所小梅の梅干し
6月中旬、巨大なザル、甕、漬け物石などをホームセンターで調達してから取り掛かる。
感想;
かなり小ぶりな梅干しだ。小梅だからそうなるだろう。食べてみる、、、
しょっぱい!!? 表面を見ると塩化ナトリウムの白い結晶が浮かんでいる。
レシピ通りに食塩量を仕込んだはずだが、対象としている梅のサイズが違うためか? 小梅の場合は表面積が大きくなる分、塩が過剰になってしまった?
また「果肉が厚」いのが特徴だとのことだがまったく感じない。実(み)はほんの少ししかない。
以来、私は毎日のお弁当に2個入れている。
お昼のお弁当で食べると、通常時よりもしょっぱさは感じないのだった。午前中の労働で疲れているから?
それにしても小梅なので個数にすると果てしなく大量にできてしまった。これを消費し終えるのはいつになるのだろうか。
2. 五ヶ所小梅ソーダ
6月上旬。五ヶ所小梅、氷砂糖でシロップを作る。
一日ごとに氷砂糖が溶解して容器底に液体が溜まっていく。少しずつシロップができてくるのが気持ちを高揚させる。
感想;
準備から2週間後、五ヶ所小梅のシロップ適量を炭酸水で割る。できあがった五ヶ所小梅ソーダ。これは美味しい! 真夏のお風呂上がりの一杯で飲む爽快感。梅の香り、最高に感じる。
シロップが多すぎると勿体無い。少なくしすぎると香りが足りず残念な感じがする。炭酸水との比率においてベストなポイントがあるのだ。
3. 五ヶ所小梅酒
6月上旬。五ヶ所小梅、氷砂糖、ホワイトリガーで梅酒を作る。保存期間を長くするほどまろやかに、琥珀色に変わっていくらしい。
上記の写真を見ると「果肉が厚」いのが特徴だというのがよく分かった。塩に漬けるか砂糖に漬けるかで梅の果肉の厚みに大きな差異が生じるのだ。
前者ではスタート時よりも縮まり、後者では逆に丸々と膨れ上がった。製造手順の差異と浸透圧に理由がありそうだ。
レシピによれば梅酒とは1年以上置くのが良いとのこと。そこまでは待てない。2ヶ月後に飲んでみた。
感想;
美味しい! 市販の梅酒と比べて遥かに味が濃い。喉を通過する最終盤に、苦味? だろうか。それがあるのもいい。
市販の梅酒は薄っぺらいのが分かる。希釈しすぎているのではないか? 梅酒は梅の味が濃厚なのが美味しいのだと知った。自分で濃度をコントロールできるのもまた手作りの良いところだと思う。
そんなわけで五ヶ所小梅の3品を作り終えた。
「三重県の伝統食材」シリーズを振り返ると、「みえの伝統野菜」6品目、「みえの伝統果実」4品目をこの1年の間にすべて入手し、その特徴を活かした料理を試み終えたことになる。
「みえの伝統野菜」
三重なばな:Ep.81
伊勢いも:Ep.78
芸濃ずいき:Ep.57
きんこ:Ep.87
たかな:Ep.84
松阪赤菜:Ep.72
「みえの伝統果実」
市木オレンジ:Ep.93
五ヶ所小梅:Ep.117
途方もない快挙である。こんなことをやった人が他にいるだろうか?
ところで、このブログの筆者はなんでこんなことをしているのか? と思うかもしれない。
料理後の感想を見るとだいたい失敗したり反省してるじゃないかと。面白おかしく書きたいだけなのかと。
それは違う。
私は、今現在三重県の四日市市で暮らしているが、今後もずっと、この街にい続けるということはない。いつか、また違う街に、地域に引っ越すことになるだろう。
そうしたときに、人生の一時期を三重で暮らしたという証が欲しいのだ。そしてそれは知識や経験といったものではなく、何らかの技術(スキル)として欲しいと願うのだった。
「キミは三重県で何を身に付けてきたのかね?」
と将来、誰かから問われたときに、
「私は三重県の郷土料理やご当地グルメを作ることができます。三重県の伝統食材を用いた料理も作れます」
と、言えるようになりたいじゃないか。
そのためにこの「三重県の伝統食材」&「料理の鉄人」シリーズをおこなってきたのだ。
私が望んだのは、この土地でしか身に付けることのできない料理の技術だった。
三重県の「オフィシャル」として選定された伝統野菜・果実は上述の10品目だが、もちろん他の伝統食材や、この地域ならではの食材はたくさんある。
今後もこのシリーズは続くのだった。
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五ヶ所小梅 Gokasho-koume the traditional ingredients of Mie, part 11
Ep.117
五ヶ所小梅 Gokasho-koume (Gokasho small plum) is one of the traditional fruits of Mie. It’s said to be thick pulp as a feature. Let’s try cooking it!
1. Gokasho-koume umeboshi (pickled Gokasho-koume)
Through 2 months process, I got it. It's too saulty! But since then, I have had 2 pieces in my lunch box.
2. Gokasho-koume soda water
After making this syrup, allocated with soda water. That was too nice. I can get wonderful fragrance of ume (plum).
3. Gokasho-koume wine
It was nice too and strong taste, compared with commercialized product.
According to this Gokasho-koume cooking, I have completed all 10 kinds of “officially” traditional vegetables and fruits of Mie.
It must be a remarkable accomplishment!
Are there someone who do it such things?
https://www.pref.mie.lg.jp/common/content/000101325.pdf