Ep.75
秋真っ盛り。一号館(Ep.36参照)で「柿」のポップを見つけた。
柿には「甘柿」と「渋柿」があり、これらの違いは、
渋み成分「タンニン」が口の中で溶けるかどうかで決まり、溶けると渋くなり、溶けなければ甘くなる。
とのこと。興味深い。これは有機化学の世界のハナシである。
調べると、アセトアルデヒドが重要な働きをしていることがわかった。
上記図のようにタンニンはアセトアルデヒドを架橋として重合し、より高分子量化することで非水溶性になるらしい。
つまり「渋抜き」作業とは、柿の中にアセトアルデヒドを発生させることが前提となる。
そして渋抜きには、焼酎(エタノール)に漬ける方法や炭酸ガス(二酸化炭素)で処理する方法があるらしい。
焼酎に漬けるというのは直感的に理解できる。エタノールが酸化されてアセトアルデヒドになるからだ。
炭酸ガスは分からなかったが、どうやら嫌気下(酸素がない環境)にするというのがポイントらしい。それによって柿の中でアルコールの合成が促進されるようだ。
ただし、柿の種類によって渋抜き方法の相性が異なるというのが面白い。
三重県では伝統野菜とは別に、「みえの伝統果実」として4品目が選定されている。
そのうちの二つが「蓮台寺柿」と「前川次郎柿」だ。
「蓮台寺柿」は300年以上前から栽培されている伊勢市の天然記念物で、まろやかでとろけるような味とのこと。
「前川次郎柿」は多気町の前川唯一氏によって発見され、次郎柿の中でも早く熟す品種とのことだ。
ところで茨城・つくば市の私の実家の庭には、柿の木があった。毎年季節になると実がなり、かと言って子どもの頃によく食べたかと言われるとそうではなかったが、とにかく柿は身近な果物という印象が強い(数年前、老木になりすぎたから切ったと父に言われた)。
だから今回蓮台寺柿と前川次郎柿を購入した際、ふと気付いたことは、「柿を購入したのは人生で初めてだった」という事実だ。
蓮台寺柿を箱買いした際、冷蔵庫に入れるのが億劫だったのでそのまま室内に2日間放置していた。
すると日中、部屋の温度が上昇したのだろう、一気に熟成が進んでしまった。
これは私も今まで見たことがなかったので非常に驚いたのだが、とろっとろのマンゴーみたいになってしまったのだ!
慌てる私。何しろ箱買いしてしまったのだ。すぐに全量冷蔵庫に移したものの、すでに熟成が加速してしまった柿は、低温環境下に移したところでそのスピードを抑制するのは困難なのだった。もちろん全部食べたが、生産者さんにも失礼なことをしてしまった..
だから柿で調理することは考えていなかった。
1. 蓮台寺柿に漬けた豚の角煮
伝説のTV番組「料理の鉄人」(1993〜1999)の最盛期は私が小学校低学年の頃だったが、たまに観ていたためとても印象に残っている。
大人になってかの番組を思い出した私は数年前、なんとYoutubeで全エピソードを観てしまったのだ! そして鉄人たちの技法をYoutubeで学習した私はたまに実践している。
いつの回だったか、フレンチの鉄人・坂井宏行シェフが何かの肉を煮込むとき、鍋にぶどうを豪快に投入していた。
だからこれを参考にして豚の角煮をぶどうと共に煮たり、あるいはすりおろしたりんごに浸けた後、煮込むというのを実践したことがある。
結果、豚肉に果物のフレーバーが付与され、肉汁に果汁も加わってなかなか美味しくできた。
そんな経緯があったから、
柿にも漬ければいいじゃん
と思ったのだった。柿をジューサーにかけてその中に豚肉を入れて冷蔵庫で一晩寝かせた。
煮込んでいるとき、ヴィジュアル的に何だかすごいことになってきたな..と思った。
オイスターソースを少しふった。
柿ソースと牡蠣ソースの共演が果たされたこの料理はどのような味をもたらしてくれるのだろうか?
感想;
見た目にも随分さっぱりしたものができた。食べてみる。柿ソースの甘味が結構良い!
他方で、肉にフレーバーが付いているわけではなかった。柿に漬けた意味はなさそうだ。柿はぶどうやりんごとは違うのだろう。
2. タラのフィレ 前川次郎柿のソース
柿ソースは甘くて良かった。なので次は前川次郎柿で白身魚とあわせるソースを作ることにした。
主役はソース。だが、
フランス料理とは火入れの技術のこと
魚も真剣に調理する。
感想;
まずコンソメキューブを入れ過ぎたというミスが挙げられる。柿の甘味の奥にコンソメの旨味が効き過ぎて奇妙な味になってしまい、まったく美味しくない。
艶やかなオレンジ色の柿ソースとブルーのお皿が映えることも意図していたが、ソースは茶色くなってしまったのも残念だった。
と、ここまで書き忘れてしまっているが、蓮台寺柿も前川次郎柿も、そのまま食べるととても美味しかったというのを記しておきたい。
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蓮台寺柿 Rendaiji persimmon & 前川次郎柿 Maekawajiro persimmon the traditional ingredients of Mie, part 3, 4
Ep.75
Autumn is the season of “Persimmon”.
Mie has 蓮台寺柿 Rendaiji persimmon and 前川次郎柿 Maekawajiro persimmon which are “the traditional fruits of Mie”.
I got these two kinds of persimmon.
By the way, I was familiar with this fruit because a persimmon tree was in the garden of my home when I was a kid.
So, in this time, I noticed the fact which I bought persimmon for the first time!
Both persimmons were so yummy.
But When I forgot to make them store in the refrigerator, ageing proceeded excessively due to room temperature got higher.
I came up with cooking, to solve this condition.
My cuisines are as below.
- Stewed pork with Rendaiji persimmon juice
- Cod fillet with Maekawajiro persimmon source
I felt sweet taste was good, but difficult to harmonize other ingredients.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kakyoshi/64/7/64_348/_pdf
https://www.pref.mie.lg.jp/common/content/000101325.pdf