みんなの笑顔が三重(みえ)てくる Jima-t’s diary

「地域性」に光をあて、「違い」を学び、リスペクトし、楽しむというスタンスで四日市や三重の魅力を伝えていきます

日永うちわ & なすび団扇

Ep.140

片手で持てるほど軽量で、柄の部分を掴み手首の力をきかせて「それ」ごと上下に動かすと、その場所の空気を前方に押し出すことができる。

この直進性の高い空気の塊(つまりは“風”)は対象にめがけて放つことができ、とりわけその対象がヒトである場合、風が肌表面の水の蒸発を促進させることで生じる気化熱により”涼しさ”を感じさせることができる。

 

 

「それ」とは、団扇(うちわ)のことである。

 

 

四日市に越して来たばかりの頃、「じばさん三重」の一角でそれを見た。

一般的なものより大ぶりでモダンなデザインのうちわ。

四日市の伝統工芸品の一つ「日永うちわ」であった。

 

東海道と伊勢街道の分岐点がある市内の日永(ひなが)地区。Ep.109参照)

江戸時代、うちわはこの宿のお土産としてお伊勢参りの人々に人気だったとのことだ。当時、それは農家の人たちが農閑期に作っていた。

 

 

現在では「三重県指定伝統工芸品」の一つにもなっているこのうちわだが、今では(株)稲藤(いなとう)、一社のみが製作している。

笹川通りの、私の通勤途中にあるギフトショップのことで、ここの2階にはたくさんの日永うちわが展示・販売されている。

 

稲藤

 

私も伊勢志摩の海人さんをモチーフにしたデザインの日永うちわを早々に購入し(かつ”うちわスタンド”も購入)、もう3年以上使っている。

 

柄の部分は「丸柄」と呼ばれるもので、これがいい。

一本の細い竹をそのまま使っているので、柄が丸く、手によくなじみ、持つとひんやり心地よい感触がします

と紹介されているがこれは本当にその通りで、見た目も実際も”涼しさ”を感じる。

 

 

「なすび団扇」 合名会社賀来商店 HPより

 

三重県指定伝統工芸品のうちわとしてもう一つ、津市の「なすび団扇」というものもある。

江戸時代後半、津藩士が考案したものとされ、将軍家や諸大名への贈答品として用いられたのだという。

柄をなす(茄子)のヘタに見立てたその名が、物事を「成す」に通じるので縁起物とされたとのこと。

 

Japan 47 Go HPより

 

ただこちらも、今では作り手はただ一社、賀来商店だけとなっているようだ。

パーツごとに見ると、扇面には「伊勢紙(伊勢和紙)」、柄には「伊賀組紐Ep.100参照)と他の伝統工芸品も使われており、とても優美だ。

 

私もこのなすび団扇については、これまでに展示されたり販売されたりしているところを見たことがない。

年間40本程度しか製作できないということで、入手するのは難しそうだ。

 

日永うちわの製作過程 稲藤HPより

 

ところで、うちわの主用途とは本当に”涼”をとることなのだろうか?

 

あらためて稲藤のホームページを見ると、

「風や光、塵を防いだり」「顔を隠したり」「装飾用」「武将の軍配」

などのワードが並ぶ。

 

 

私は『最後の料理人』(2019年)を著した徳岡孝二さんが述べていたことを思い出していた。

徳岡孝二さんとは、泣く子も黙る京都吉兆 嵐山本店」の元ご主人で、現・(株)京都吉兆の会長さんである。

 

戦前、夕方に最寄りの嵐山駅に着いたら迎えの方が来ており、提灯(ちょうちん)と団扇(うちわ)を渡された。

団扇は何に使うのかと思っていると、渡月橋に近付くとホタルがいっぱい飛んでいて、そのホタルを払うために必要なのだという

 

ホタル イメージ図 オマツリジャパン HPより

 

なんと、団扇(うちわ)とは

「目の前の”うっとうしいホタル”を振り払うための道具」

でもあるのだった!?

 

いとをかし

 

 

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Traditional Hand Fan of Mie, “日永うちわ Hinaga Uchiwa” & “なすび団扇 Nasubi Uchiwa”

Ep.140

日永うちわ Hinaga Uchiwa (Hand fan) has been a souvenir for people going to Ise Shrine since Edo period and now one of the Official Traditional Crafts of Mie.

A part of handle is made of bamboo and surface is designed some motifs of this prefecture.  It’s so nice!

 

Another traditional hand fan is なすび団扇 Nasubi Uchiwa from Tsu city.

It was a gift to Shogun or lords (Upper class samurai) from vassal of Tsu.

Today, according to revival, this shows us elegant visual.  What so cute Eggplant-shaped is!

These two traditional hand fan must make us so wonderful feeling.

We might feel “special wind” with these two traditional fan.

 

inatoh.co.jp

www.tsu-bussan.com

www.pref.mie.lg.jp

www3.nhk.or.jp

 

www.sagagoryu.gr.jp

kyoto-kitcho.com