Ep.198
2011年、ニュージーランド代表・オールブラックスは自国開催のW杯で試練にみまわれていた。
当時すでに世界最高のSO(スタンドオフ)だったダン・カーターがプールステージ後のトレーニング中に負傷。大会からの離脱を余儀なくされたのだ。
「第一」のSOダン・カーター Dan Carter Planet Rugbyより
ダン・カーターとは、後年、2021年に現役引退するまでにオールブラックス通算112キャップ、テストマッチ通算1,598得点(ワールドラグビー史上最多)、年間最優秀選手賞3回、W杯優勝2回。
つまりは「ラグビー史上最高のSO」になった男だ。
ノックアウトステージからは「第二」のSOコリン・スレードがスタメンで出場し始めた。
オールブラックスのSOの2番手である。その実力の高さは言うまでもなく、W杯でチームを優勝に導くのに何の不安もなかった。
ところがこのコリン・スレードも、準々決勝アルゼンチン戦の前半に負傷。大会からの離脱を余儀なくされた。
続いて出てきたのは「第三」のSOアーロン・クルーデン 。
オールブラックスのような強豪はW杯のプールステージで格下相手には2nd choiceのメンバーで戦う。だから二番手のSOまでは準備万端だろうが、三番手の出番となると稀だ。
しかしながらそこはオールブラックス。強力なチームメイトのサポートもあり、準々決勝のアルゼンチン、続く準決勝のオーストラリアという競合たちを撃破。クルーデンの得点もあった。
そしていよいよ決勝に臨むオールブラックス。
ところがなんと、このアーロン・クルーデンも、決勝戦のフランス戦の前半に負傷。
離脱を余儀なくされた。
ここまで来たらさすがのオールブラックスも緊急事態である。
次から次へと離脱していくSO。まるでジョークのような話だ。
そこで出てきたのが「第四」のSOスティーブン・ドナルド。
ドナルドは、W杯開幕段階ではオールブラックスの登録メンバーに入っておらず、オフを満喫するため家族でバカンスを楽しんでいたという。
ところがケガ人続出により急遽招集され、そうだとしても出番はそうはないだろうと思われたら決勝戦に来て大会初出場(途中出場)。
ドナルドが出てきたとき、オールブラックスのチームメイトも、NZ国民も、最大級のハラハラドキドキだったに違いない。
決勝戦の行方は如何に?
しかし同状況下でもきっちり勝利するのがオールブラックスの面目躍如だった。
ドナルドは後半6分、ペナルティキックを決めて8-0とリードを広げる。
その直後に1トライ1ゴールを許して8-7となるも、試合はそのまま最小得点差でタイムアップ。
結局、ドナルドの得点が「決勝点」となり、オールブラックスが母国で2度目のワールドチャンピオンに輝いた。
点差だけ見ると薄氷の勝利だった。
されどラグビーという競技において、少なくとも攻撃面では最大のカギを握るSOスタンドオフの「国内トップ3」を次から次へと失う”最大級の試練”に直面しながらもなお、世界王者に辿り着いたのは、”ラグビー王国”の脅威的な選手層の厚さに他ならなかった。
これにおいて「オールブラック2011」は、ワールドラグビー史に残る伝説のチームとなった。
というわけで、先述のSOたちについて改めて記すとともに、彼らと「日本ラグビー界」との関わりについてまとめてみる。
「第一」のSO;ダン・カーター(現コベルコ神戸スティーラーズ、18-20シーズン在籍)
「第二」のSO;コリン・スレード(現三菱重工相模原ダイナボアーズ、20-22シーズン在籍)
「第三」のSO;アーロン・クルーデン(現コベルコ神戸スティーラーズ、20-22シーズン在籍。現東京サントリーサンゴリアス、22-23シーズン)
「第四」のSO;スティーブン・ドナルド(現三菱重工相模原ダイナボアーズ、13-14シーズン在籍。現東京サントリーサンゴリアス、16-17シーズン。現東芝ブレイブルーパス東京、17-18シーズン、現NECグリーンロケッツ東葛、18-20シーズン在籍)
なんと、4人のSOたちはみな、日本のトップリーグ(当時)のチームに在籍していたことがあるのだ!?
さて、今節の三重ホンダヒートの相手は、「第二」のSOコリン・スレードと「第四」のSOスティーブン・ドナルドがかつて所属していたチーム、三菱重工相模原ダイナボアーズである。
「ダイナボアーズ」とはDinamic Boarsから。
名は体を表すというが、上記から連想されるのは猪(イノシシ)の”直線的で猪突猛進”なイメージ。明治大学ラグビー部の”前へ”にも通じるだろうか。
ダイナボアーズはこの20年間の日本ラグビー界のトップカテゴリーにおいては下位に位置するチームであるが、今シーズンは強く、既に4勝を挙げている。
3/24(日)、鈴鹿スタジアム。
今シーズン、鈴鹿開催の試合は必ず現地観戦していた私であるがこの日についてはそれが叶わず、契約したJ-Sports(有料放送)をPCで観ることとした。
前節3/17(日)、ビジターでの花園近鉄ライナーズ戦。(Ep.98参照)
ついに、ついに今シーズン初勝利を挙げたヒート。
この試合は本当に手に汗握る、一進一退の展開だった。(私は同じくJ-Sportsで観て興奮していた)
初勝利の勢いそのままに、ホームでの初白星を狙う。対戦相手のダイナボアーズとは、そう実力差はない。勝てる相手である。
キックオフ。
前半15分、先制トライはなんとヒート。ラインアウトモールから最後はNo.8ヘイデン ・ベッドウェル=カーティス選手。
いつも試合開始すぐにトライを奪われるヒートだがこの日は違った。この先の展開が期待できそうだ。
しかしその後ヒートはトライを2本返される。
8-14とリードされて後半へ。
後半11分、ヒートはまたもラインアウトモールから最後はFL服部航介選手がトライ。18-14とする。
その後も一進一退。後半22分までは23-21とリードを奪うも、ここから離されてしまった。
後半35分、ヒートはPGを決めて26-31とし、ワンチャンスで逆転可能な点差とするも、そのままタイムアップ。
雨中の決戦を僅差で制したのはダイナボアーズだった。
惜しい試合だった。
が、ミスは多く(これも実力の低さ)、細部を詰めていかなければ勝利できないことは明白。
確かに前節、近鉄戦は勝利できたが、同試合は相手チームの目を疑うようなミスと低調なパフォーマンスが連発されたのが事実。幸運は2試合連続では訪れなかった。
以前、私はヒートが今シーズン勝利できるとするならば、可能性が高いのは、
3/10(日) vs リコーコーブラックラムズ東京
3/17(日) vs 花園近鉄ライナーズ
3/24(日) vs 三菱重工相模原ダイナボアーズ
の3連戦であると書いた。(Ep.195参照)
結果的に、1勝2敗。
勝利という、最低限の結果は残せたことに大きく一安心したのは、私だけではないはずだ。
次節からの対戦相手たちはすべてまた、実力に勝るチームたちだ。
正直に言うと、すでにDivision2チームとの入れ替え戦に行くことが決定的ではあるが、主力選手たちの怪我からの復帰で“真のベストメンバー”を組めたときの、このチームの真の強さを、知りたいと心から願う。
中位のチームなら十分に打ち負かせる実力がヒートにはある、と私は見ているのだが..
そのとき、今シーズンの2勝目が見えてくるはずだ。
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Rugby Mie Honda HEAT vs Mitsubishi Heavy Industries Sagamihara DYNABOARS
Ep.198
Match Week 11 of Japan Rugby League ONE in 23-24 season, Mie Honda HEAT fought against Mitsubishi Heavy Industries Sagamihara DYNABOARS.
HEAT aimed back to back wins following last week, but DYNABOARS showed strong performance. As a result, HEAT couldn’t exceed only a little against their rival, 26-31.