みんなの笑顔が三重(みえ)てくる Jima-t’s diary

「地域性」に光をあて、「違い」を学び、リスペクトし、楽しむというスタンスで四日市や三重の魅力を伝えていきます

ラグビー 三重ホンダヒート vs 東京サントリーサンゴリアス 編

Ep.189

三重ホンダヒートの第3節(ホーム第2戦)の相手は東京サントリーサンゴリアス

言わずと知れた日本ラグビー界の名門である。

 

東京サントリーサンゴリアス HPより

 

私が高校ラグビーをしていた2000年代前半当時、トップリーグ(旧社会人リーグ)で一時代を築いたのが旧サントリーだった。

テレビで放映されるトップリーグの試合としてはリーグ戦のプレーオフや日本選手権しかなかったから、私にとってラグビーを見始めて最初にふれたクラブチームがサントリーだった。

 

当時のメンバー(特に2001年辺り)というと、

PR長谷川慎 (2019、2023W杯日本代表スクラムコーチ)

FL元申騎 (げんしんき。名前だけでなくヘッドギアもカッコよかった)

FL大久保直弥 (引退後サンウルブズのHCなどを歴任)

No.8斉藤祐也 (競泳の14歳の五輪金メダリスト岩崎恭子の元夫)

SH田中澄憲 (現東京サントリーサンゴリアスHC)

SO伊藤宏明 (この後イタリアリーグに移籍)

CTBアルフレッド・ウルイナヤウ (当時の日本のラグビーシーンにおける最強最高のCTB。誰もこの人の突進を止められなかった)

CTBアラマ・イエレミア (同上。最強最高のCTB。ウルイナヤウと交代して後半途中から出てきていた。元バリッッッバリのオールブラックス

WTB小野沢宏時 (2007W杯で格上相手にはどうせ勝てないからと2軍メンバーで挑む方針をとったジョン・カーワンHCに公然とキレていた)

FB栗原徹 (2002年の日本代表の台湾戦で1人で60得点を獲り世界記録を作る)

 

といったところか。

あぁ、なんて多士済々のメンバーだったことだろう。

 

監督は土田雅人(現日本ラグビー協会会長)氏。

超攻撃的なスタイルのチームだった。試合前から、今日はサントリーがどれだけ圧倒的に勝利するだろうか?、と楽しみにしていたファンは私だけではなかったはずだ。

ラグビーを見始めた高校生にとって、好きにならないはずがなかった。

 

小野沢宏時選手 ラグビーリパブリックより

 

大好きだったサントリーだが、私の心の中で変化の兆しが現れ始めたのが清宮克幸監督の就任だった。

ご存知のように早稲田大学で母校を3度の大学日本一に導いてからステージを上げてトップリーグにやって来たのである。低迷していた早大を短期間で劇的に復活させ、時の絶対王者関東学院大学を凌駕させるまでにしたその確かな手腕と比類なきカリスマ性ゆえに、早大関係者の間では早々から“清宮永久監督説”もあったというほど。

早大監督としてのラストシーズンであった2005-06シーズンはチームスローガン“アルティメットクラッシュ”をかかげて完璧な強さで大学日本一になるとともに、日本選手権でトヨタ自動車をも降し「大学ラグビー史上最強チーム」を作りあげてしまった。(Ep.30参照)

完璧すぎる早大監督時代だった。

 

野心ある本人は大学ラグビーの監督で留まる気はさらさらなく、またそのことを隠さなかった。

そして鳴り物入りトップリーグサントリー)の監督としてやってきた。

それは、前述の選手たちの何人かと土田監督がチームを去り、少し低迷していたサントリーを、早大のように劇的に復活させることが期待されてのことであり、また高い確度でそうなるだろうとも予想された。 

サントリーでも幾つもタイトルを獲得して時代を築き、やがては日本代表の監督になるのだろう、とも思われた。

 

清宮監督(早大時代) 時事ドットコムより

 

私は清宮監督が嫌いな訳では決してなかった。

けれど、なんというか、この時代の清宮監督の「やることなすこと全てうまくいく」状況とそうさせる手腕が、一人のラグビーファンとして面白くなかったのだ。

(少なくとも傍目から見る分には)簡単にチームを勝たせてしまう、結果を残してしまう、成功に導いてしまう。

指導者として、まさに無双状態だった。

 

ビッグマウスと挑発的な物言いも腹立たしくなってきた。

けれど指導者として周囲がぐうの音も出ないほどの結果を残しているから、世間にもよく響くし様になる。

競技は違えど、青山学院大学の原晋監督の箱根駅伝を4連覇していたときの状況、と言えばピンとくるだろうか?

 

選手のリクルーティングも腹立たしくなってきた。

清宮監督がサントリー監督に就任した2006-07シーズン、主な新人加入選手というのが、

No.8佐々木隆道 (早稲田大の主将。清宮ワセダの”アイコン”)

HO青木佑輔 (早稲田大。同じく清宮ワセダの重要人物の一人)

No.8竹本隼太郎 (慶応大の主将)

SO野村直矢 (法政大の主将。当時の法政は強豪チーム)

LO篠塚公史 (法政大。後に日本代表キャップ38)

FB有賀剛 関東学院大の主将。”対清宮ワセダの象徴”)

 

清宮ワセダの“アイコン”佐々木隆道を含め強豪大学の主将総取りの様相であった。

特に、当時早大と“崇高な2強時代”を築き、つまりは清宮ワセダとバチバチに4年間頂上決戦を繰り広げた最大のライバル関東学院大の、3年次から主将を務め、つまりは”対清宮ワセダの象徴”とも言える有賀剛(あるがごう)すらサントリーに加入し、新たに清宮チルドレンになってしまったことはラグビーファンと関係者に衝撃を与えた。

アルガよ、お前もか!

と思ったものだった。

 

要するに私は、清宮監督が強すぎるが故に、いつしかサントリーのアンチになっていたのだ。

 

有賀剛選手 東京サントリーサンゴリアス HPより

 

「清宮サントリー」のその後の話を簡潔に書く。

トップリーグの優勝こそしたものの、日本選手権のタイトルは獲れず。最大級の期待値を持って監督に迎え入れられた経緯からすると、期待はずれと言えるものだった。

東芝ブレイブルーパスのNo.8ルアタンギ侍バツベイに”ブザービート・逆転トライ”を許したり、三洋電機ワイルドナイツのSOトニー・ブラウンのゲームコントロールに完敗したり。

キレの良かった清宮監督のコメントも、いつしか歯切れの悪いものになっていった。

 

この時代の日本ラグビー界は、東芝から三洋電機への覇権の移行期だった

清宮サントリーは、この大きな流れに抗うことができず、すなわち時代を作ることはできなかった。

 

トニー・ブラウン選手 トップリーグ HPより

 

4シーズンを指揮しただけで清宮監督はサントリーを去ることになった。

(だが翌年より、中央から地方(静岡県磐田市)に赴任して中堅クラブ(旧ヤマハ発動機ジュビロ)を優勝争いをするチームまで一気に引き上げたところにこの人の凄さがあるのだが、それはまた別の話である)

 

サントリーのその後の話としては、

CTB平浩二、CTBライアン・ニコラス、LO真壁真弥、PR畠山健介、SH流大、CTB中村亮土、WTB松島幸太朗、SH齋藤直人といった日本代表を輩出し、

SHジョージ・グレーガン、FLジョージ・スミス、SOボーデン・バレット(現トヨタヴェルブリッツ)といったスーパースターを招聘し、

エディー・ジョーンズ(現日本代表HC)、沢木敬介(現横浜キヤノンイーグルスHC)といった名指導者がタイトルに導いてきた。

 

あぁ、こうして振り返るとやはり、サントリー(現東京サントリーサンゴリアス)とは、日本ラグビー界随一の名門である。

 

三重ホンダヒート HPより

 

第3節、三重ホンダヒートvs東京サントリーサンゴリアス

この試合も観戦に訪れた私たち家族は今回も臨時駐車場(Ep.186参照)でいいやとハナからそちらに向かう。

 

今回の臨時駐車場利用者には「お菓子パック」が配布された。相変わらずのホスピタリティだ。

 

 

ヒートのスタメンで前節からの変更はWTB藤田慶和、WTBデビタ・リーといったあたり。

対するサントリーはFB松島幸太朗、WTBチェスリン・コルビ、FLサム・ケインというスターが名を連ねる。

 

試合開始!

 

開始早々2分にトライを奪うサントリー。12分、18分にも重ね、0-17とリードを広げる。

Division1の優勝候補相手にヒートは相変わらず苦戦を強いられる。

 

すると28分、サントリーのサム・ケインが負傷退場してそのまま交代してしまった。。

なんということだろう。彼のプレーを見るのがこの試合の楽しみの一つだったのに。。

泣く子も黙るオールブラックスの現役キャプテンだったのに。。

注目して見よう(今回のブログで取り上げよう)と思う間にいなくなってしまったのだった。

 

サム・ケイン選手 東京サントリーサンゴリアス HPより

 

ヒートは29分、相手ゴール前でアタックを継続しペナルティを受けるとキックを選択。難なく決めて3点を返す。今シーズン、これがホーム初得点だった。ヒートファンで埋まるスタジアムが湧く。

(この時点で17点リードされていたためやや意外だったが)この選択が結果的にとても良かったと思う。

 

ヒートは37分にも同様のシチュエーションで同様の選択をし、6-17で前半を折り返す。

試合開始18分までは「この試合もボコボコにされるかも」という過去2試合の悪夢も蘇ったが大丈夫。

 

チェスリン・火の玉小僧”・コルビ

チェスリン・コルビ選手 東京サントリーサンゴリアス HPより

 

“ポケットロケット”と称される南アフリカ代表・スプリングボクスのエースが今シーズン、サントリーに加入したのは最大の話題の一つだ。

 

[チェスリン・コルビの特長①:高速のパス動作]

ラグビーリパブリックより

 

究極的な足の速さとサイズの小ささを持つコルビ。

だが今回、プレーをスタジアムで見たことで初めて理解できた彼の特長について記したい。

一つ目は、高速のパスの動作だ。

 

ボールを味方に放る、その“一連のモーション”がとにかく速かった!

スピードとクイックネスが生命線の同選手だから、ボールを抱えて自らランするのか、味方に渡すのか。後者も素早く行うのが好ましいのは考えてみれば当然だ。

相手ディフェンスからするとコルビがどういうプレーの選択をするか分からないから厄介であだ。

 

[チェスリン・コルビの特長②:横に走る]

ロイターより

 

ボールを持ってこんなにも“横に走る”選手を私は初めて見た。

ラグビーではスワーブと言って、足の速い選手が一時的に横に走るスキルがあるが、それはWTBがトイメンのミスマッチ時、かつ外側に無人のスペースがある時に使うのが主。

コルビの場合は、(これをスワーブと称するかは別として)あらゆる局面で発動させるから驚いた。

ラグビーでは“ボールを持ったら前へ走る”のが基本中の基本。高校ラグビーで初心者の一年生が“横に走る”と指導者からも先輩からも怒られると思うが、コルビの場合は許されるのだろう。

 

前述の“高速のパス動作”と併せて、

前へ走るのか、横へ走るのか、パスを放るのか

その全ての動作が高速だから手に負えない。

 

私はかねてから“ポケットロケット”というコルビの愛称にいまいちピンときていなかった。

「ロケット」から連想されるのは“直線的な”猛スピードであり、それでは同選手の一つの側面しか言い表せていない。

 

そこで私は彼の新たな愛称を考えた。

「ロケット」という燃焼機構のニュアンスは残しつつ、可愛らしいルックスとサイズの小ささから連想される「丁稚奉公で来るような小僧」のイメージを併せて、

 

チェスリン・火の玉小僧”・コルビ

 

命名した。いかがだろうか?

 

松島幸太朗選手 東京サントリーサンゴリアス HPより

 

後半15分、ヒートBK陣のパスワークが乱れたところでこぼれ球をサントリーFB松島幸太朗が取得。そのまま一気に走り切ってトライ。ゴール裏から見ていた私にもそのスピードがよく分かった。風のように速かった。

「速っ! こうたろう、速っっっ!!」

と、私の隣で観戦していた女性が何度も感嘆していた。

 

三重ホンダヒート HPより

 

後半19分、ヒートに待望のトライが生まれた。

SH竹中太一が密集のサイドを抜け出して一気にサントリーゴール前へ。ポイントができて素早くFWが前へ。PRマティウスバッソン(190cm,116kg)が相手タックルの成立前に脚を二掻き三掻きして前進する、まるで“ダンプカー”かのようなプレーでさらにゴールに迫った後、最後はPR平野叶翔のトライ!

今シーズン、ホームでのヒートの初トライであり、客席も大盛り上がり!!

 

 

三重ホンダヒート HPより

 

続いて21分。またしてもゴール直前まで迫ったヒートはBKラインに人数の余りを作り出し大外に展開。ここに待っていたのがLOフランコ・モスタート!

「なぜここにモスタートが!?」

と私の心は震えた。

彼は迫り来るコルビに長い左手でハンドオフを繰り出しトライ!!

 

なんて痛快で劇的なシーンなのだろう。スプリングボクスのW杯2連覇戦士同士の瞬間的なバトルだった。

この日最大の盛り上がりを見せたスタンド。

 

フランコ・モスタート選手 三重ホンダヒート HPより

 

が、TMOが行われる旨とその理由が場内解説で流れるとイヤな予感が。

リプレイを見ると、時間的にだいぶ前、ヒートゴール近くでヒートのHO李承爀(リスンヒョ)がオブストラクションをしているように見える。

ボールが動いている近くで李がぼけーとジョグをしていて結果的に相手タックラーを妨害して味方の突破を間接的にサポートしていた(とみなされてしまった)。まさかのノートライ。

なんて怠慢なプレーなのだろう。シンジラレナイ。私は心の中でクソっと罵っていた。高校ラグビーだと先輩に激怒されるやつである。

 

モスタートのトライは幻に終わった。コルビを吹っ飛ばしたシーンはヒートの今シーズンのハイライトになったかもしれないのに。本当に残念。李選手個人としてもチームとしてもこれは猛省してほしい。

 

東京サントリーサンゴリアス HPより

 

その後26分に追加トライを奪われるヒート。客席からは「さっきのトライが認められてたら面白くなってたのになぁ」との声が聞こえる。

 

しかしヒートは意地を見せる。31分、相手ゴール前でのラインアウトスクラムモールから押し込み、最後は古田凌主将がトライ! 意図した通りのプレーで一本を返す。ファンは大喜び。

 

三重ホンダヒート HPより

 

試合は16-34でヒートの敗北。開幕3連敗となった。しかし過去2試合とは異なり勝利への兆しが見えたのも事実だ。

ホームゲームで2トライを奪った。ただそれだけの事実がポジティブに捉えられる。

 

そしてもう一つ。私はこれまで何度もスタジアムでラグビーを観戦してきたが、今更ながら確信したことがある。

それは、

ラグビーではホームチームはどんなに点数が離されていても、最後までトライを目指さないとダメだ

というものだった。

 

この試合、ヒートがトライを奪ったときのファンの喜びの大きさを、深さを、全て持て余すことなく文字で表すことは難しい。

スタジアムの盛り上がりは、本当にすごかったのである。

残り時間を考えると現実的にはもう逆転できないのは分かっている。けれどファンは、最後の1プレーまで、応援しているチームのトライを求めている

 

ラグビーという競技において、トライは特別なものなのだ。

そんな、当たり前の事実に気付かせてくれた、東京サントリーサンゴリアス戦だった。

 

 

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Rugby Mie Honda HEAT vs Tokyo Suntory Sungoliath

Ep.189

Match Week 3 of Japan Rugby League ONE in 23-24 season, Mie Honda HEAT fought against Tokyo Suntory Sungoliath in their home, the Suzuka stadium.

Suntory Sungoliath was one of the strongest club team of Japanese rugby union.

HEAT had been lost the score since kick-off, but they got back 2 tries.  Consequently, HEAT was defeated.

Their challenge for a victory as Division 1 would go on.

 

www.youtube.com

www.honda-heat.jp

www.suntory.co.jp