Ep.192
Division1 第4節(1/7)、三重ホンダヒートvs静岡ブルーレヴズ。
ヒートにとっては3戦連続でのホーム鈴鹿開催だ。
静岡ブルーレヴズ。
まったくピンとこない。旧ヤマハ発動機ジュビロである。
レヴズRevsとは「rev 回転数を上げる」から転じて「情熱」を象徴しているのだという。
2016年か17年のこと、当時袋井市に住んでいた私は旧ヤマハ時代のレヴズの試合を静岡エコパスタジアムで観たことがあった。ヤマハには五郎丸歩(Ep.30参照)や矢富勇毅がいた。
相手はNTTコミュニケーションズ(現浦安D-Rocks)。当時日本代表だったNo.8アマナキ・レレイ・マフィがいた。
雨の降る中での試合だった。観客はほとんどいなかった。
両者に実力差はあったし実際にヤマハが快勝したが、NTTはマフィの突進で活路を見出そうとしていた。
私の近くの席にいた熱狂的なヤマハファンの女性が
「マフィを止めて! マフィをぉっっっ!!」
と繰り返し叫んでいたっけ。彼女の切実な声は雨のスタジアムにこだましていた。
6年ぶりにレヴズの試合を観戦するにあたり、私のピックアップ選手はSH矢富勇毅選手だった。
早稲田大とヤマハで清宮克幸監督の教えを受け、清宮チルドレンとして佐々木隆道(早大→サントリー)とともに最も象徴的な選手である。
39歳になる今シーズンも変わらず試合に出て活躍し続ける矢富を応援しようと思ったのだが、この試合、スタメンにもベンチにも矢富の名前がない?! なぜだ…前節はスタメンだったというのに。格下(ヒートのこと)相手にはわざわざ矢富を出すまでもないということなのか?!
非常に残念だがしょうがない。矢富選手についてはまた別の機会で詳しく書く機会もあるだろう。
前々節(Ep.186参照)、前節(Ep.189参照)に引き続き、この日も私は臨時駐車場へ。シャトルバスに乗り込むにあたり、今日は「HEAT特製おかき」が配布された。
赤福(第2節)→お菓子パック(第3節)ときて、今回ついにヒートの名を冠した品が出てきた。どの辺が特製かは分からないが…
ありがたいのだが、けっこう量が多くて食べるのが大変そうだなぁ、と思った。
何気なく裏面のラベルを見ると、
製造者が「有限会社スギウラピーナッツ」とある。
「スギウラピーナッツって、あのスギウラピーナッツか?」
と驚く。
住所は四日市市大井出(おおいで)だから間違いない。
私は以前たまたまこのお店の前を通ったことがあり、スギウラピーナッツという風変わりな会社名を記憶していたのだ。そのときはネット検索してもどのような製品を作っているのか分からなかったが、こういうことだったのかと合点がいった。
さらにこの試合はF1ドライバー、角田裕毅選手が来場していた。
角田選手は神奈川出身だが鈴鹿サーキットレーシングスクール(Hondaが運営)の卒業生(Ep.124参照)。
ホンダつながりで、かつ24年のF1日本グランプリ(鈴鹿サーキット)は春開催ということでPRに来たようだ。
私はタイミングの問題で姿を見られなかったが、試合前とハーフタイムにしゃべっていた。
スタジアムに入場したらブルーレヴズのユニフォームを見て拍子抜けした。彼らは「赤」いユニフォームを着用していた。
自らを「ブルー」と名乗っておきながらなぜ赤なのか?
やはり青と赤は正反対の色という印象が強い。
私はサッカープレミアリーグで“赤い悪魔”と称されるマンチェスター・ユナイテッドがかつて、2ndユニフォームで「青」を着用していたことを思い出した。
試合は立ち上がりから得点を重ねるブルーレヴズが優位に進めていた。
ヒートはゴール前のディフェンスで踏ん張れない。このエリアまで迫られるとほぼトライを許すという展開が続く。
あまりに簡単にグラウンディングされる状況に「なぜもっと抵抗できないのか?」と私の失望が募る。
ヒートは相手ゴール前に迫り、ペナルティを得てキックをチョイス。
この選択は良い。前節のサントリー戦も同様に3点を得て良い流れを作った。2本のキックを決めて6-31で前半終了。
しかし結果的にこの試合、ヒートは前節のように流れを持ってくることができなかった。
後半11分、ブルーレヴズの南アフリカ代表・クワッガ・スミスにこの日2トライ目を許す。
ゴール前ラックからの失点だった。
<クワッガ・”ザ仕事人”・スミス>
ヒートゴール前でディフェンスラインは揃っていたのに、その隙間に“にゅるにゅる”っと身体を滑り込ませてグラウンディングしたクワッガ・スミス。
彼のパフォーマンスには脱帽せざるを得ない。
この試合に限らず今シーズンの開幕から、いやもっと言えばW杯から、同選手のプレーは冴えに冴えている。
オールブラックスとの同決勝。チームがリードしている状況で後半途中から出場したクワッガ・スミスは、相手エースWTBウィル・ジョーダンがボールを抱えて走っているところをスタンディング状態で奪取。これ以外にもターンオーバーを連発。
相手に流れを渡さない、オールブラックスからすると実にイヤな選手だった。
180cm、94kg。同決勝の解説を新聞に寄稿した清宮克幸氏によると
「スミスは私がヤマハ時代に獲得を熱望した選手。公称180cmだが本当はもっと背が低い」
とのことだった。つまりは170cm台の「小兵」選手である。
一般的にFW第3列(FL、No.8)の選手は、ディフェンス面でボールへの貪欲なプレー(密集での働き)とひたすらなタックル、オフェンス面でボールキャリヤーとしての働きが求められる。
特に後者においてはフィジカルストレングス、身体の大きさが望まれる。
相手DFの壁をぶち抜いて突破する、そんな力強さである。
ピーター・ステフ・デュトイ(トヨタヴェルブリッツ)やシャノン・フリゼル(東芝ブレイブルーパス東京)、姫野和樹(トヨタヴェルブリッツ)らがそれである。
しかし小兵FLにそれは難しい。
彼らは自身の身体の小ささを自覚した上で自身が活躍できる術を、プレーを磨いているのだ。
クワッガ・スミスの場合、密集における超速のボールへの絡み(奪取)と、相手DFのスキを突く切り込みアタックがそれである。
スプリングボクスではサブであったが静岡ブルーレヴズではキャプテンであり、スタメンでフル出場する。
風貌に似合わず年齢はまだ30歳だ。
「豪快」なプレーではなく粛々と事を成し遂げるその働きぶりは「仕事人」と形容するにふさわしい。
そこで私は、彼をクワッガ・”ザ仕事人”・スミスと命名することにした。
なお”クワッガ”とは元々は彼のニックネームで、「クアッガ quagga」のこと。南部アフリカの草原地帯に生息していた絶滅した動物のことだ。
クワッガ・スミス選手の活躍をきっかけにあれこれ考え始めた私は、
私の印象に残っている懐かしの170cm台のFL(フランカー)について想いを過去に走らせた。
<170cm台のFLその①:ジョージ・スミス>
オーストラリア代表・ワラビーズやサントリー(2011-14、2016-18)で活躍したスーパースター、ジョージ・スミス。身長180cm。(公称なので彼も170cm台だろうということで..)
若いときはドレッドヘアがトレードマークだった。
姫野和樹が19年W杯で活躍したとき、日本メディアではやたら「ジャッカル」という言葉が飛び交ったが、このジャッカルという言葉は、元々はジョージ・スミスのあだ名であった。
彼が得意としたのが、相手ボールの密集から身体を突っ込んでマイボールにするというプレーだったのだ。
もちろん、それ以前にもこのようなプレーや概念自体は存在していたが、呼称はなかった。
近年、米メジャーリーグで先発投手が「100球未満で完封勝利すること」を往年の名投手の名を冠して”マダックス”と呼ぶようになっているが、これに似ているかもしれない。
サントリーでは格の違いを見せつけて2シーズン連続のリーグMVPを獲得。
ジャッカルだけでなくボールキャリヤーとしても凄かった。
しかし17年に泥酔状態でタクシー運転手に暴行するという犯罪行為を犯してしまい、解雇。後味は悪かった。
<170cm台のFLその②:フィル・ウォー>
フィル・ウォー、173cm。
90年代から2000年代前半に活躍した、こちらもワラビーズの名選手だった。
私はこの選手を初めて見たとき、まず外見に目が行った。
大変失礼ながら頭髪は薄く、されど金髪を激しく振り乱し、顔はサメみたいに凶暴だと思った。
実際、外見だけでなくプレーも激しかった。
2003年のW杯などではオーストラリアのFLはフィル・ウォーと前述のジョージ・スミスだった。オープンサイドフランカータイプの名手が2人いたことになる。
彼らの系譜を継いだのがマイケル・フーパー(182cm)なのかなと思ったりする。
<170cm台のFLその③:竹山浩二>
竹山浩二(ひろし)。173cm。奄美大島出身!
この人こそ常に相手ボールの奪取を目論む危険なハンターだった。
時は2006-07シーズン、大学選手権決勝、関東学院大vs早稲田大。(Ep.30参照)
カントーが乾坤一擲のパフォーマンスでワセダを降した伝説の試合だが、同試合でも竹山選手は活躍。当時はツイストパーマをかけていて、何というかとても「野生味」があってよかった。
話をヒートvsブルーレヴズに戻そう。
試合はヒートが圧倒されていた。
後半22分で6-50。もはや逆転は不可能な残り時間である。
するとエリア中央からヒートのFB植村陽彦選手が突如ラインブレイクしてゴールに迫る。
突風のような速さでそのまま走りきりトライ!
ヒートにとってこの日最初の(また唯一の)トライを奪った。これまでの試合展開の鬱憤を晴らすかのように。
このときヒートファンの観客は大いに湧いたことを、ここに明確に記しておきたい。
植村選手は私が高校時代にボコボコにされた茨城・茗溪(めいけい)学園出身。筑波大を経て今シーズンヒートに加わったルーキーだ。ようこそ三重へ!
最終的に、13-62でタイムアップ。
この試合のヒートのパフォーマンスで良いところを挙げるのは困難だ。
前節で2トライをあげて光を見出したはずのアタックも、この日は低調。
毎試合、試合内容を徐々に良くしていくというのは難しいことなんだな。。
クローリーHC、古田凌主将の試合後コメントも失望の念がにじむ。
そんな中、復帰が期待されるヒートの選手たちの姿が。
鈴鹿でのホーム開催では試合後、メンバー外だったヒートの選手たちによる観客のお見送りがあるのだが、そこに初めて、パブロ・マテーラ選手(Ep.183参照)の姿があった!
アルゼンチン代表・プーマスのFLとしてW杯日本戦で負傷した同選手が合流し、チームでリハビリを重ねているということか。
テレビ中継ではスタンドで試合を観戦するLO/No.8ヴィリアミ・アフ・カイポウリ選手の姿も。
改めて彼らキープレイヤーの不在が嘆かわしいが、言い換えると前途は明るい。
来節からは約2ヶ月におよぶビジターでの連戦という正念場。
彼らの早期復帰と活躍がヒートに勝利をもたらすことを期待したい。
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Rugby Mie Honda HEAT vs Shizuoka Blue Revs
Ep.192
Match Week 4 of Japan Rugby League ONE in 23-24 season, Mie Honda HEAT fought against Shizuoka Blue Revs in their home, the Suzuka stadium.
But HEAT was beaten 13-62.
Revs’s FL Kwagga Smith showed incredible performance and made HEAT go to hell.
Home crowd of Suzuka stadium was so much disappointment..