みんなの笑顔が三重(みえ)てくる Jima-t’s diary

「地域性」に光をあて、「違い」を学び、リスペクトし、楽しむというスタンスで四日市や三重の魅力を伝えていきます

ラグビー 三重ホンダヒート vs 釜石シーウェイブスRFC 編

Ep.145

日本ラグビーリーグワンDivision2の2022-2023シーズン

三重ホンダヒートにとっては、悲願のDivision1(1部)昇格に再チャレンジするシーズンが始まった。Ep.8998参考)

 

22-23シーズンの三重ホンダヒート

シーズン開幕前、チームにとって最大のニュースはパブロ・マテーラ選手の加入である。

アルゼンチン代表”プーマス”のNo.8にして、2019年W杯時の同国の主将だ。

 

クルセイダーズから移籍してきた。

クルセイダーズとは、前身のスーパーラグビーから5連覇中(2017-2022)のNZ最強のクラブチームであり、サッカーでいうレアル・マドリッドのようなクラブだ。

 

パブロ・マテーラ選手 Rugby Republic HPより

 

彼がNo.8に入ったヒートは、それまでのNo.8ヴィリアミ・アフ・カイポウリ選手(トンガ)がFLフランカーやあるいはLOロックにまわることもある。今シーズンもチーム最大のビッグネームであるLOフランコ・モスタート選手(南ア)は健在なので、ヒートのFW第二列、第三列の5人というのはDivision2で最強。Division1のチームと比べても遜色ないほどに強力であると思う。

 

2月下旬、シーズンは終盤戦へと向かう中でチームは好調で2位をキープ。入れ替え戦出場に向けて視界は良好だ。

 

 

vs 釜石シーウェイブスRFC

2/26(日)は「四日市市民応援DAY」と銘打ち、四日市市在住の人たち3,000人を無料招待するとのことだった。

そんなわけでさっそく応募。今回、私は家族で観戦に訪れたのだった。

 

もちろん、ヒートの運営者としては、ラグビーをスタジアムで観戦したことのない、ラグビーに馴染みがない方にこの競技の楽しさを知ってもらいヒートのファンになってもらう、ことを意図してこのような企画をしたはずだから、私のようなラグビー観戦上級者(自称)がタダで観に来てしまうのは狙いではないだろうが、タダだったらラグビーファンは足を運ぶだろう。

 

 

釜石とスコット・ファーディー

日本ラグビーにとって「釜石」といえば、新日鉄釜石である。

全国社会人大会を7連覇した伝説の「北の鉄人」だが、私はリアルタイムで知る世代ではない。

 

釜石シーウェイブスは2001年、新日鉄釜石ラグビー部のクラブチーム化を受けて誕生し、そこからは主に2部リーグで戦っている。

 

私にとって釜石シーウェイブスというと、ある一人の選手の名前が思い出される。

スコット・ファーディー(1984年生まれ)である。

オーストラリア出身、198cmの体躯を持つFLで、2009年から3シーズン在籍した。

 

スコット・ファーディー選手(右) レンスター(アイルランドの強豪クラブ) HPより

 

この選手を日本で有名にしたのは、2015年W杯でのオーストラリア代表“ワラビーズ”での活躍(準優勝に導いた)があったからなのだが、このとき、併せて非常に印象的なエピソードが語られる。

2011年3月、ファーディー選手は釜石で被災したのである。

 

津波に続いて原発のニュース。母国オーストラリア政府は自国民に退避を呼びかけた。

このとき、海外メディアにおける日本の原発のニュースは大変切迫感のある悲観的なものだったと聞く。

空前絶後の自然災害と人災で「日本は終わった」的なメディアによる論調の中、ファーディー選手はしばらく釜石に留まることを決意。

チームメイトと共に地域のボランティア活動に従事した。

 

このエピソードはあまりにも印象的で、日本人はこれを美しいストーリーとして語り継ぎたいだろうが、ファーディー選手をこの美談の枠だけで語るのは違う。

そこじゃないのだ。

 

元々、母国オーストラリアでエリートだったわけではない。それゆえに極東のラグビー弱小国の、それも2部リーグに所属するチームにやって来た。しかもそこは中央から遠く離れた地方の港町だった。

 

釜石での活躍があり、2012年に母国の超強豪クラブ、ブランビーズに移籍。

2013年にオーストラリア代表“ワラビーズ”に初招集されて、2015年W杯ではファーストチョイスの6番として出場。準優勝に貢献した。

 

私はファーディー選手のこの驚くべきサクセスストーリーが好きだ。

日本ラグビー界の、それも2部に所属したチームから始まったストーリーなのだ。

 

AFP より

 

○○を制する者はゲームを制す

ところでマンガ『スラムダンク』において、

リバウンドを制する者はゲームを制す

というセリフが出てくる。

 

これは湘北高校バスケットボール部の赤木主将が、初心者・桜木花道に対して言ったもので、

彼の運動能力、身体のサイズと負けん気の強さを見込み、ゴール下(リング下)での役割が求められるポジション(パワーフォワード)への適性を見抜き、桜木をバスケットボール選手へと導くことになる作中屈指の名言である。

 

アニメ『SLAM DUNK』より

 

この言葉は物語の終盤、絶対王者・山王工業戦にて結実することになり、安西監督も

「桜木くん、キミがオフェンスリバウンドを取れるなら、それは-2点(失点)がなくなり、+2点(得点)のチャンスが生まれる」

と言って桜木に奮起を促す。

 

「+4点分の働きってことだな!」

と合点した桜木の活躍により、チームは逆転勝利をおさめることになるのだが、

私は赤木主将が桜木に言った「リバウンドを制する者はゲームを制す」の意味について、深く考えたことがあった。

 

映画『THE FIRST SLAM DUNK』より

 

スポーツでは勝利のために「攻め」る必要があるが、もちろん相手も同じことを考えているから「守り」の場面も訪れるだろう。

一方は攻め、もう一方は守る。

そうなると必然的に、矛と盾が激突する局面が生じる。「攻防の界面」とも言い換えられる。

 

したがってこの局面を制することが、すなわちゲームを支配すること、ひいては勝利することにつながるのではないか。

だから各スポーツの当事者は「攻防の界面」は何なのか? どこにあるのか? を見極め、注力する必要があるし、観戦する側にとってもそこが要チェックなのである。

 

赤木主将の理論では、バスケットボールにおけるそれは「リング下での争い(リバウンド争い)」ということになるのだろう。

バスケではリング下こそが、勝敗を左右する「最も激しいボール争奪局面」なのである。

 

レノックス・ルイス(イギリスの元世界ヘビー級王者) Britannica より

 

他のスポーツではどうだろう?

例えばボクシングなら?

 

これは簡単だ。「左を制する者は世界を制す」と言うように、右利きボクサーにとってはジャブ(左)の攻防で優位に立つことこそが、右を撃ち込むための布石になる。

 

 

続いて柔道はどうか?

これも容易だ。「組手争いを制する者はゲームを制す」だろう。

相手の道着をしっかりと掴み、自分にとって有利な体勢とすることが、相手を投げ飛ばせることにつながる。

 

大野将平の対戦相手を思い出してほしい。掴まれたら投げ飛ばされるのが目に見えてるから、組手争いで劣勢と見るや「逃げ」てしまう。

東京五輪で連覇を達成した後、新聞の取材で大野選手は、さながら「鬼ごっこ」のようだったと語っていた。

 

相手が組み合ってくれない。

柔道という競技自体が成立しないこのような現状が長年続いたことが、彼が第一線からしりぞく決断をした要因になっただろうことは、想像できた。

 

あぁ。本当に大野将平とは、歴史上最強の柔道家の一人である。

 

大野将平 Wikipediaより

 

続いてサッカーではどうか?

これは色々挙げられるだろうが「中盤の攻防を制する者がゲームを制す」というのが私の考えだ。

 

試合終盤のパワープレーや一時期の国見高校のように、中盤をすっ飛ばして前線にロングボールを送るという戦法もあるだろうが、レアケースだろう。中盤を無視することはできないはずだ。

 

パスを回してビルドする上で、一方でゾーンを敷いて守る上で、最も激しいボール争奪局面がこのエリアで繰り広げられるからだ。

だからトップ下やセンターハーフボランチと呼ばれるポジションの選手たちは、この最も激しい中盤で、重責を担っているのだ。

 

リッチー・マコウ(右) ROAR HPより

 

さて、それではラグビーではどうだろうか?

 

ラグビーにおいてゲームを支配する最も重要な局面。

それは「ブレイクダウン」である。

 

ボールキャリアーが突進する。相手のタックルが決まる。両者が倒れる。そこからボールの奪い合いが始まる。

それがブレイクダウンである。日本語で「接点」とも呼ばれる、最も激しいボール争奪局面である。

 

ブレイクダウンに参加するプレイヤーはもちろん誰しもががんばらなければならないが、とりわけ大きく期待されるのが、FLフランカー(6番、7番)とNo.8(8番)というFW第三列の3人の選手たちだ。

 

多くの場合、ブレイクダウンに最も早く駆けつけるのが彼らで、そこで繰り広げられるフィジカルバトルこそが、勝敗の行方を左右する最も重要な因子となる。

ブレイクダウンを制する者がゲームを制す

 

スコット・ファーディー選手のポジション、フランカー(FL)とは、ブレイクダウンにおける仕事人である。

 

 

スコット・ファーディーとブレイクダウン

私は2015年W杯をよく観ていたが、スコット・ファーディーは狂気のFLであった。ブレイクダウンに次から次へと突っ込んでいった。

 

決勝の相手は宿敵のオールブラックス

この試合の両チームのFW第三列を振り返ってみよう。

 

ワラビーズ(オーストラリア)

6番:スコット・ファーディー

7番:マイケル・フーパ

8番:デイビッド・ポーコック

 

オールブラックスニュージーランド

6番:ジェローム・カイノ

7番:リッチー・マコウ

8番:キアラン・リード

 

・・・はぁ。ため息が出るメンツである。

これは両国の歴史上、いや、ワールドラグビーの歴史上、最も華々しく、名声高い第三列ではないか。まさに頂上決戦。

今となってはフーパー以外は現役を引退しており、さながら伝説の選手たち、いや、ほとんど神話の世界の住人たちといってよいだろう。

 

ファーディー選手はこの人たちとフィジカルバトルを繰り広げていたのだ。

これは「ワールドラグビーの歴史上、最も激しいブレイクダウン」だったと言い換えても良い。

 

 

三重ホンダヒート vs 釜石シーウェイブスRFC

話が長くなったが現代に戻ろう。スコット・ファーディーをきっかけに熱く語ってしまったが彼はもう釜石にはいないのだ。

 

 

晴天の「スポーツの杜 鈴鹿」。ゴール裏に陣取った。

キックオフ直後から攻めるヒート。こちら側に向かって来る。やはり遠近感はつかみづらい。

 

ヴィリアミ・アフ・カイポウリ選手 公式HP より

 

前半30分までにカイポウリ選手の2トライにより15-0とリード。コンバージョンキックが決まらないので点差は開かないが、ヒートが優位に試合を進める。

 

公式HP より

後半になっても大勢は変わらず。8点差までは詰めらるが安全圏をキープ。

最終的には41-26で三重ホンダヒートが勝利。

見事に、無料招待した四日市市市民に勝利を届けた。

 

公式HP より

 

Division2の順位でも2位以上を着々と固めつつある。

首位の浦安D-Rocksとヒートの2チームが抜けているので、入れ替え戦出場は濃厚になってきた。

実力的にライバルと目された日野レッドドルフィンズ(Ep.89参照)が不祥事により終戦したことも大きい。

 

いよいよ今シーズンも最終盤。

彼らのDivision1昇格を応援しよう!

 

 

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Rugby Mie Honda Heat vs Kamaishi Seawaves RFC

Ep.145

In the late Feb., the match of 22-23 season of Japan Rugby League ONE, Division2, Mie Honda Heat vs Kamaishi Seawaves RFC was held in the Suzuka stadium.

Kamaishi Seawaves is from Kamaishi city, Iwate prefecture.  Their former team was steel company’s club, Shinnittetsu Kamaishi which achieved 7 consecutive win of national championship in 1980’s!

 

This is a significant legend story, therefore, Kamaishi is the special term for Japanese rugby society and history.

 

But For me, the memory of Kamaishi Seawaves is Scott Fardy, who has been a “Madness” Australian Flunker(joined 2009-2011 in Kamaishi).

He was a Non-elite player, therefore came there, Kamaishi and showed excellent performances during 3 seasons, went back to his mother country, capped Wallabies, at last played the final of 2015 Rugby World cup against All Blacks.

I love this marvelous success story.

 

By the way, this match, Kamaishi Seawaves was not able to lead due to Heat’s strong attack.  In the result, Heat defeated Seawaves 41-26 and stepped forward to their goal in this season, Division1.

 

rugby-rp.com

www.afpbb.com

www.honda-heat.jp

www.honda-heat.jp

kamaishi-seawaves.com