Ep.190
5年間(高校1年生〜大学2年生に相当)、その後(成績優秀かつ)希望者は「専攻科」に進んで2年間(大学3、4年生に相当)を学ぶ。
一般的には5年間、最長で7年間の教育システムである。
工学(機械・電気・化学など)を学んだ卒業生たちはおもにメーカーに就職し、その地の工場やプラントを支える。
就職活動に苦しむ4年生大学の学部生たちとは異なり、就職率は100%だ。
しかしそんな「高専」におよそ縁のないまま人生を歩む人が大半だ。
ほとんどの人は高専のシステムや、その存在すらもよく分かっていない。
家族や友人(中学時代のクラスメイト)が当事者か、または職場の同僚が出身者か、でもない限り。
大学院時代、私の研究室の同僚や他の研究室には高専出身者がたくさんいた(専攻科を終えて大学院に進学した人たち)。
彼らは例外なく非常に優秀な人間たちばかりで、彼らのうちそう少なくない人数が博士課程に進み、先生たちの評価も絶大だった。
だから私の高専に対する関心は高い。
ところで私の現在の職場も高専出身者であふれている。
彼らに前述の“私が学生時代に出会った優秀な高専出身者たち”の話をすると、
「それは、その人たちが特別優秀なだけですよ!」
と必ず言われる。
半分謙遜、半分本音、といったところだろうか。
(ただ確かに、5年で高専を終えた人と、専攻科+他大の院まで行った人とを比べると、後者が意欲や実力の点で優っているのも事実だ)
高専について関心の高い私は以前から不思議に思っていたことがあった。
それは、
県庁所在地に(ほぼ)高専はない
ということだ。
全国各地にある高専。その所在地を見てみよう。
例えば、
久留米高専(福岡県。県庁所在地は福岡市)
あるいは「校名に県名がついている」高専でも、
例えば、
東京高専(八王子市)
沖縄高専(名護市)
など。
いずれも県庁所在地を“外して”きている。
これはどういうことだろうか?
「国立大学」もまた全都道府県にある。
そしてこちらは例外なく“都道府県庁所在地に本キャンパス”がある。
国立大も高専も歴史は古い。
創設当時、日本や地方の役人たちは、“学術施設が各県内の一箇所に集中しないよう”に調整したのではないか。
だから高専の所在地は県庁所在地のとなり街だったり、県内第二の街だったり、あるいはちょっと意外な街だったりにある。
(と言ってもそれは現在だから俯瞰できる結果論であって、高専創設を機にその街を発展させる企みだったが狙い通りにはならなかった、という例もあるだろう)
ただこの機会に調べてみると“県庁所在地にある高専”もいくつかあることに気付いた。
秋田高専、長野高専、富山高専、神戸高専、松江高専、大分高専だ。
一方で“高専が一つも存在しない県”もあった。
これにはけっこう驚いた。
近大高専(きんだいこうせん)は近畿大学工業高専のことで、こちらは非常に珍しい私立の高専である。
「高専」と一言いうとき通常は「工業高専」のことをさす。前述までの「高専」もその意味で使ってきた。
その意味で鳥羽商船高専は異なる。
「商船」という単語からもイメージがつくように、これは貨物船や客船のことである。
鳥羽商船高専の商船学科では船舶の運転などについて学び、練習船での実習もあるようだ。
鈴鹿高専(鈴鹿工業高専)。この高専の出身者は「工業都市・四日市」の化学プラントやコンビナートを支える。
機械工学・電気電子工学・電子情報工学・生物応用化学・材料工学科からなり、生徒数は1000人を超えるようだ。
陸上・走り高跳びの衛藤昂(えとうたかし)選手(1991年生まれ)は鈴鹿高専出身だ。(Ep.133参照)
地元も鈴鹿市。全国高専大会(インターハイにあたる)で4連覇。日本選手権も4連覇。2016リオ五輪、2020東京五輪に出場。
というかこの見事なキャリアは鈴鹿高専のみならず、“高専史上最強・最高のアスリート”ではないだろうか?
すると今月(24年2月)に入って驚きのニュースが飛び込んできた。
2年間第一線を退いていた衛藤選手が競技会に復帰し、日本選手権室内大会で優勝を飾ったのだ(記録は2m24cm)。
現在は会社員としてフルタイム勤務とのこと。競技との両立、今までとは違うチャレンジをポジティブに捉えているとのことだった。
鈴鹿高専のキャンパスと学生たちの様子をうかがえるのが「鈴鹿高専祭」。
23年度は10/21、22に行われた。
私はこの高専祭に行くのを楽しみに一月前から予定に入れており、そのことを職場の鈴鹿高専出身者に言ったら
「よくそんなの行きますね」「卒業してから高専祭の存在なんて忘れていましたよ」
と、皆、つれない。
私は今回家族とピクニック気分で訪れたのだった。
鈴鹿高専祭は盛り上がっていた。割と開始時刻すぐに訪れたのに駐車場はすでに埋まり、来場者であふれていた。
学生たちは、若い。それもそうだ。大半はティーンエイジャーなのだから。
主に部活動ごとに飲食を出店で出している。声を張り上げて客を呼び込んでいる。なんて元気なんだろう。
他にも若さを感じる光景を目にしたが、あまり“若さ”だと強調するのはよそう。
自分が年寄りみたいで虚しく思えてくる。
大学の学祭もそうであるが、これらのいいところは地域住民にも開放していることだ。
昨年まではコロナ禍により“生徒たちだけ(あるいは保護者、関係者まで)”と来訪者を限定しているところが多かったが、今年(23年)はどこも全面解禁しているようだ。
加えて、“小さなお子様向け”の出し物も結構あるのがありがたい。
近隣に住む子どもたちだろうか? ちびっ子も多数来場して楽しんでいるようだった。
かつては水泳部による男子シンクロ、“ウォーターボーイズ”も有名な催しだったとのことだが、今はなくなってしまったようだ。
出店の売上利益は自分たちの懐に入るようで、だから“本気”で儲けるため努力していたのだという(職場の出身者談)。
「高専」に対する理解が深まる楽しい思い出となった。
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Suzuka Kosen (Suzuka Colleges of Technology)
Ep.190
Kosen school (Colleges of Technology), it’s unique educational system.
Their students learn science & engineering for 5 years in common and for 2 years as addition, (equivalent to until 2nd year university student in common) after that, they get a job with companies in that region.
Mie has three Kosen schools, and the biggest one is Suzuka Kosen.
For chemical plants and factories in Yokkaichi, their contribute is so huge due to donation of much human resources.
In October, I had a chance to touch with this school and its students, “The Suzuka Kosen Festa”!
It was a good event for those interested in.