Ep.48
サッカー天皇杯の戦いは、春先から既に始まっていることをご存知だろうか?
元日決勝が風物詩になっているこの大会は、最後の方まで残るのはJ1のチームだが、一回戦から登場するのは「都道府県代表」チームだ。
そして天皇杯本戦の前に、この都道府県代表を決定する戦いが全国各地で繰り広げられており、三重県の場合は、5/9に行われた決勝戦、
鈴鹿ポイントゲッターズ vs FC. ISE-SHIMA
の勝者が本戦に駒を進めることとなる。
鈴鹿PGについては以前に記した(Ep.40参照)通り、現在JFLに三重県から参戦している2チームの内の1つで、県内初のJリーグ入りを目指している。
FC. ISE-SHIMA(FC伊勢志摩)は、JFLの一つ下のカテゴリー・東海社会人リーグ1部(地域リーグ)に参戦しており、簡単に言うと三重県内のサッカークラブの格付けでは「3番手」ということになる。
FC伊勢志摩は三重県南部・南勢地域をホームグラウンドとしており、JFL参戦、そしてゆくゆくはJリーグ参戦を目指しているチームだ。
興味深いことに選手たちの勤務先は三重県No.1ローカルスーパー「ぎゅーとら」(Ep.38参照)だ。
そして監督は小倉隆史氏。かつてレフティーモンスターと呼ばれたストライカーだ。
小倉監督の出身は鈴鹿市で、高校は三重サッカー界の強豪、四日市中央工業高校(よんちゅうこう)。
現役引退後も名古屋グランパスの監督をつとめたり、民放のサッカー番組のコメンテーターをつとめたりと精力的に活動する中、2017年、故郷・三重のクラブチームに招かれた。
私は三重県に住んでいるので、小倉監督やFC伊勢志摩の選手たちが「いじめ防止」を訴えて駅前で啓発活動をしていることもニュースや新聞を見て知っている。
素晴らしいことだと思う。ヒエラルキー頂点のA代表やJ1のチームがある一方で、小倉監督のような人と地域のクラブチームが、この国のサッカー界のすそ野を支えているのだ。
天皇杯に話を戻す。
私はこの三重県頂上決戦をスタジアムで観戦するつもりだったが、コロナ禍により無観客試合になってしまった。。
しかしなんと、三重県ではNHK総合で生中継してくれるというではないか!?
やるじゃないか津放送局!
というわけでTV観戦した。
小倉監督とFC伊勢志摩にはがんばってほしい。
が、私は以前、鈴鹿PGの試合をスタジアムで観戦して以来、ミラ監督やFWエフライン・リンタロウ選手(7番)のファンになってしまい、以後も休日に家にいるときはYouTubeで彼らの試合をリアルタイムで観て(JFLでは動画配信がある)、応援してしまっているので、この試合も、鈴鹿PGを応援することにした。
キックオフ!
序盤、(私の想像に反して)FC伊勢志摩が躍動する。パス回し、キレのある動き、球際の強さ。鈴鹿PGを圧倒する。
私はFC伊勢志摩の試合を観たのは初めてで、「格下」だという先入観が申し訳ないがあったから、正直戸惑った。彼らは強敵だった。
テレビに小倉監督の姿が映る。顔は老けたかもしれないがヘアースタイルは当時から変わらない。精悍な顔つきも。
小倉監督は神妙に語っていた。
「僕は三重県で高校まで18年間お世話になりましたし、何か恩返しができたらと思っていた」。「鈴鹿さんは格上」と。
現役時代の実績ではこの日のスタジアムにいる誰よりも突出している小倉監督が、謙虚に語る。
前半の終盤の方になってくるとやや均衡してきたが、それでも鈴鹿PGは決定的なチャンスをつくれない。0-0で折り返す。
後半、鈴鹿PGは徐々に自分たちの形ができそうになってきたが、それに伴いFC伊勢志摩の堅守が目立つようになってきた。
鈴鹿PGにとっては点を獲れなくてイヤな感じの雰囲気になっただろうか?
相手は格下(少なくとも周囲からそう見なされている)。守りを固められる。
準決勝では自分たちと同格のヴィアティン三重(Ep.46参照)に延長0-0でPK勝ち。
その試合でGKがファインセーブ連発。という事実。
自分たちも同じように負けるのか?
という思いが頭によぎり始めても良い時間帯と試合展開だった。
するとここで鈴鹿PGのミラ監督が動く。
後半13分、なんと「3枚同時交代」かつ「FWの2枚同時替え」を行ったのだ。驚いた。
これがこの試合を劇的に変えることとなる。
交代で入った3選手の一人、FW遠藤純輝選手(11番)が、裏から飛び出しゴールに迫る。しかも短時間のうちに3度も同じチャンスを作る。
交代選手の特色や強みをいかす意図が感じられ、ゴールに迫るパターンに変化が見られる。
もはや誰の目にも試合の流れが鈴鹿PGにあることは明白だった。
エフライン選手をはじめ、高さのある選手がニアサイドに配置される中で、ただ一人ファーサイドに残ったDF今井那生選手(26番)がドンピシャで合わせると、強烈なヘディングシュートがネットに突き刺さった。
ゴール!!
フラストレーションを吹き飛ばす爽快な先制点となった! 歓喜に沸く鈴鹿PG。
するとミラ監督がまたしても動く。
後半34分、最終5枚目の交代でエフライン選手をベンチに戻す。
前線のターゲットになりポストプレーに強みのあるエフライン選手の存在は1-0のリードを守りきるのであれば大きいはずだ。しかし彼に代えて新たに攻撃的な選手を投入するという。これでスタメンの3トップを全員交代して、交代選手も全員攻撃の選手ということになる。
1-0で逃げ切るよりも、2点目、3点目を奪いに行った方が、勝つ確率が高いとのミラ監督の読みだったか。
読みは面白いように当たった。
後半39分、前線でのボール奪取からMF海口彦太選手(8番)のミドルシュートにより2-0。
後半41分、途中交代ながら既に明白なマンオブザマッチ級の活躍をしていたFW遠藤選手のループシュートで3-0。
スコアこそ最後は差がついたが、鈴鹿PGにとって楽な試合ではなかった。
勝敗を分けたのは、個人的には、
監督の選手交代策による強引な流れの引き寄せと、
攻撃パターンの豊富さ、というところだろうか。
試合前、ミラ監督はNHKのインタビューで語っていた。
「どんな相手でも勝ちに行く攻撃的なチームを目指しています。自分たちはディフェンスが得意ではなく、攻撃が好きな選手が多く、そうした選手を起用するのが私のスタイルです。」
かっこよすぎるぞミラ監督!
点がたくさん入ると楽しい。攻撃的なスタイルは見ていて面白い。
サッカーに限らず、団体球技における共通の理屈だ。
地域のクラブチームが人気を得るのは容易なことではない。
その手段の一つが「攻撃的なスタイルの確立」なのだ。
そのためにスペイン人指導者を招き、本国のメソッドを導入する。
そんな鈴鹿PGのクラブとしての姿勢を私は支持したい。
その後、鈴鹿PGは5/23に行われた天皇杯本戦でFC刈谷を撃破! 各地でも天皇杯一回戦が続々と消化された。
言い方は悪いが下々のものたちの戦いは終わりを告げ、天皇杯は二回戦へ。いよいよJリーグのチームが登場してくる。
母国の生きる伝説が所属するJリーグいちの金満クラブとの対戦だ。
だからミラ監督と鈴鹿PGが伝説を創るとしたら、まさにこの試合なのだ。
天皇杯ならではのジャイアントキリングに期待したい。
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The Emperor’s cup Mie prefectural tournament final 2021
Ep.48
The Emperor’s cup (The Japan football championship) has already begun since spring season.
Mie prefectural qualifying held the final,
Suzuka point getters vs FC. ISE-SHIMA
Suzuka PG was introduced Ep.40. They participate JFL and aim J-League.
On the other hand, FC. ISE-SHIMA participate Tokai region league which is lower category of JFL. Their dream is also to be a participant of J-League.
Their head coach is Ogura Takafumi who is famous for a left-footed striker in his playing carrier.
I expect him and his club.
But I’m a big fan for head coach, Mila and the ace, Efrain Rintaro (No.7).
So I decided to cheer Suzuka PG in this game.
In the 1st half, FC. ISE-SHIMA was superior to slightly.
But Suzuka PG was gradually able to express their rich attacking performances.
At last 68min, Suzuka PG scored a goal in a corner kick.
And they added another 2 goals as middle and loop shoot. 3-0 was final score.
Suzuka PG won the championships of Mie, passed prefectural tournament and got the ticket to the Emperor’s cup.
Two weeks later since then, they defeated FC Kariya in 1st round.
So that their next game will be against Vissel Kobe from J-League.
I hope their big performance and giant-killing!