みんなの笑顔が三重(みえ)てくる Jima-t’s diary

「地域性」に光をあて、「違い」を学び、リスペクトし、楽しむというスタンスで四日市や三重の魅力を伝えていきます

近鉄湯の山線 驚きのサクセスストーリー“アクアイグニス” in 湯の山温泉

Ep.181

名古屋から電車で30分の三重県最大の都市・四日市からさらにローカル線で西に30分弱行った終着駅の山の麓から、バスとロープウェイで登った山頂に三重県唯一のスキー場がある、と言うと意外に思う人は多い(Ep.333495参照)。

そのローカル線とは「近鉄湯の山線」であり、その終着駅とは湯の山温泉駅である。

湯の山温泉は開湯1300年という近畿地方屈指の歴史を誇り、映画「男はつらいよ」のロケ地にもなった(Ep.103参照)。

 

計10駅、15.4kmの近鉄湯の山線は、近鉄四日市駅から湯の山温泉駅までを結ぶ。

 

しかし例外的に近鉄名古屋駅から湯の山温泉駅を直通(近鉄名古屋線近鉄湯の山線)で結ぶ「足湯列車」というものが12月〜1月にかけて土日に運行されている。

車内はヒノキ造り、足湯は「運行日に菰野町職員が町内の源泉でくんだ湯を張って40度前後に保つ」とのことである。

近鉄提供のイメージ写真を見ると優美すぎて衝撃である。

 

「足湯列車」のイメージ 中日新聞より

 

「足湯列車」ではない通常の湯の山線近鉄四日市駅から終着駅に向かってみよう。

 

ラッピング電車@近鉄四日市駅

 

単線を進む。始発駅の近鉄四日市では学生や社会人などけっこう乗客がいるものの、湯の山方面に進むにつれてどんどん降りていく。そして景色もどんどん田んぼになっていくのが微笑ましい。

 

 

電車に乗って来たのは初めて。バスターミナルがある。御在所岳Ep.6参照)の登山客はここからバスに乗る。

私の今回の目的地は同駅から四日市方面にやや戻ったところにある「アクアイグニス」である。

 

鈴鹿山脈を背に向かう

 

癒しと食の総合リゾート施設、とされる。

何それ? という感じだ。

具体的にはレストランとパン屋と雑貨屋と銭湯と宿泊施設などがあり、特に「食」にこだわった施設である。

 

近鉄四日市駅の広告

 

ホームページなどで紹介されている写真ではデザインにこだわった随分オシャレな施設だが、実際には規模は小さい。

 

 

アクアイグニス自慢のレストランが、辻口博啓さんのスイーツ、奥田政行さんのイタリアン、笠原将弘さんの日本料理の店。いずれもスターシェフである。

同施設がオープンしたのが2012年だから、その時にはまだ奥田さんと笠原さんは今ほど有名ではない若手シェフの一人だったはずだ。

 

辻口博啓さん HPより

 

以前にも書いたが私は『料理の鉄人』のファンで(Ep.147など参照)、その中でも特に初代・和の鉄人、道場六三郎さんのファンなので、道場さんのYoutube『鉄人の台所』は全て観ている。先日それに笠原将弘さんがゲスト出演し、道場さんと“プチ料理対決”をしていた。

笠原さんは義母さんから教わったというゴーヤチャンプルーを披露。同料理は道場さんたちから絶賛されていた。私もこの際の笠原さんの手捌きや技法(ゴーヤは15分熱湯に浸けて苦味を抜くなど)を参考にしているのだった。

 

そんな笠原さんも自身のYoutube『【賛否両論】笠原将弘の料理のほそ道』を始動。かなり精力的にアップしている。

飾らず高価な食材も使わない料理、家庭料理などをポイントを解説しながら披露している。謙虚で物腰が柔らかい笠原さんの人柄も含め、自身のやりたい料理が伝わるようになっているようだ。

 

笠原将弘さん 朝日新聞デジタル より

 

地産地消」というワードは昔からあったものの、これを突き詰めて行い地元を盛り上げ、東京でも成功して名声を得た、その最たるオーナーシェフが奥田政行さんだ。

奥田さんの料理目当て、当該地域の食材目当てで山形県鶴岡市への観光客を激増させた。自身の思想と行動力と料理の実力で地元の生産者に誇りを与え、地域を活性化させた。元気のなかった「地方」を「食」を中心にすることで劇的に変えた。

 

私は奥田さんの著書をいくつか読んだ。合理性、ハードワーク、レジリエンス(困難を乗り越えて回復する力)。宇宙の視点から地球の環境と食を見つめるという視座の高さと、魚介に残る僅かな潮の香りからそれが日本のどこの港で水揚げされたかを当てられるという「絶対味覚」を持つ。そして、意外と結構な自信家。

 

奥田政行さん ヒトサラより

「サーラ ビアンキ アル・ケッチャーノ」のスパゲッティ

 

話は戻るがアクアイグニス。

同施設の近くに住んでいる私だが実はここには滅多に行かない。年に1回くらいだ。地元の人菰野町四日市市在住の人)もよく行くという話は聞いたことがない。お店の数は多くはないし単価も高い。

 

しかし人気の施設である。

理由は湯の山温泉の近くであることに加え、新名神高速道路菰野ICの隣というロケーションが大きい。つまりは関西と名古屋を結ぶ自動車道の途中にあるわけであり、ここからの来訪者を一定数集客できるためである。というより、これを見込んでこの地を選んだのだろう。

 

高速道路沿い

 

地方でも東京でもレストランを立ち上げて成功した奥田さんは著書の中で、

地方と東京のレストラン経営は違う。人口の多い東京では『一見さん』だけでも経営が成り立つ世界だが、地方ではリピーターを作らなければいけない

というようなことを述べていた。

 

ではアクアイグニスの場合はどうか、というと、ここは前提としては決定的な地方・田舎なのだが、前述の周辺施設の影響により『一見さん』のみでも集客・経営が成り立つという例外的な状況なのだ。事実、大型観光バスが停まっているしガイドブック片手の若者も見る。

 

ビジネスは成功しているように見える。

地元民を含めて多くの人が驚いたサクセスストーリーだった。

この成功体験を基にして、伊勢神宮かつそこに向かう伊勢自動車道の近辺に作った“弟分”が「Vison ヴィソン」(21年4月オープン)なのだが、これについてはまた別の機会で書くこともあるだろう。

 

 

駅のホームに降り立ち、湯の山温泉駅を去りゆく電車の運転士さんにバイバイと手を振ると、彼は運転中の真剣な表情が一瞬ゆるみ、警笛を鳴らしてくれた。

まるで地方(田舎)の若者が地元でクルマを運転しているときに友人のクルマを見かけたから「プッ」とクラクションを鳴らすあれに似ている。

なんて愛くるしいのだろうローカル線とは。

 

 

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Kintetsu-Yunoyama Railway & AQUAIGNIS

Ep.181

近鉄湯の山線Kintetsu Yunoyama Railway is one of the local trains which runs from Kintetsu-Yokkaichi to Yunoyama-Onsen station, 15.4km.

Yunoyama-onsen (Yunoyama hot springs) was established 1,300 years ago!  It’s one of the oldest hot springs sites in Kinki region.

 

When you are on that train from Kintetsu-Yokkaichi, you will notice that the closer you approach destination, the more the sight is rice fields!

 

Nearby this station, a total resort area AQUAIGNIS has started since 2009.

It is included hot spring, restaurants, shops, but especially “food” is specialized.

Some present Japanese “star chef” produce their restaurant based on “local production for local consumption” concept.

It seems this business is succeeded despite such countryside.

 

www.kintetsu.jp

www.chunichi.co.jp

aquaignis.jp

www.youtube.com