みんなの笑顔が三重(みえ)てくる Jima-t’s diary

「地域性」に光をあて、「違い」を学び、リスペクトし、楽しむというスタンスで四日市や三重の魅力を伝えていきます

八重姫(信長の孫かつ菰野藩初代藩主正室)

Ep.182

オールタイム織田信長俳優ランキング」というものを考えることがある。

ドラマや映画でこれまでに数々の二枚目俳優に演じられてきた信長であるが、その中で誰がベストだったか?というものだ。

 

織田信長 Wikipediaより

 

実際のところどうだったかは知る由もないが、一般的に信長を表すキーワードとしては、「合理性」「新しいもの好き」「頭脳明晰」「烈しさ」といったパーソナリティに加え、「美男子」という外見的要素がある。ランキングではこれらの要素を基準とする。

ということで私的なトップ3を挙げてみた。

 

第3位 豊川悦司(「江 〜姫たちの戦国〜」2011年のNHK大河ドラマ

NHKより

 

信長を演じるにあたり第一に求められるのは「ヴィジュアルのカッコよさ」に違いない。

その点で、豊川悦司の信長はベストではと思う。

 

同作品は、信長の妹の市(いち)の3人の娘の一人、江(ごう)を主人公にしたNHK大河ドラマだった。

作中では、信長が自身と同じ“気質”を持つ姪(江)の存在に気付き、彼女に一目置き、また江も叔父を恐れず、慕い、両者は交流する。

 

そもそも史実として信長と江の両者は会ったことがあるのか? からして不明であるが、同作品中では「覇王・信長に通じる器を持った幼き姫・江」が描かれた。

 

NHKより

 

私が興味深かったのは、豊川悦司鈴木保奈美という90年代の民放トレンディドラマの象徴のような2人が、今や大河ドラマで信長と市という重厚な役を演じているという事実そのものだった。

しかも同作中、市は兄・信長を激しく憎むという人物造形。

長年わだかまりのあった2人が腹を割って対話をすることで初めて互いを理解するに至る、というのが序盤のハイライトなのだが、そのシーンは真剣に観たものだった。

 

NHKより

 

 

第二位 江口洋介(「軍師官兵衛」2014年のNHK大河ドラマ

NHKより

 

江口洋介の信長を一言で表すると「少年」だった。

初めて黒人を見たとき、初めて地球儀を見たとき、江口信長は己と日本がどんなに小さな存在かを悟り、また世界の広さと、それが驚きに満ち溢れた素晴らしいものであることを確信するのだった。

 

「日の本を統一した後、余は世界を旅する」(世界征服ではなく文字通りの世界旅行であり“冒険”)

 

目を輝かせて衝撃的な将来のプランを披露する夫に対し、

「私もお供します」

と同じく目を輝かせて応じる正室濃姫内田有紀

 

キミたちは10代後半のカップルか?

とツッコミたくなるほどに、若く、夢を共有する2人の姿は眩しかった。

 

 

第一位 渡哲也(「秀吉」1996年のNHK大河ドラマ

NHKより

 

そもそもこのランキング自体が故・渡哲也さんの信長を念頭に置き、そこからどれほど乖離しているか、どれほど共通しているか、を測るものであるから1位は決まっていた。

私にとって創作物で描かれる織田信長とは、すべて渡信長が基準であり前提なのだ。

 

1996年の大河ドラマ「秀吉」より。平均視聴率30%超えを記録し、言わずと知れた“大河ドラマ史上最高傑作”である。私にとっては小学4年生のとき。

 

第一話、色黒でふんどし一丁で泥だらけになって農作業をする元気だけはいっぱいの醜男(←失礼)

ヴィジュアルだけでも強烈なインパクトだったが、この男が戦国大名となり、天下を統一し、関白に上り詰めるという「あり得ない」未来を視聴者に想起させる史実と併せて、視聴者はさらに絶句せざるを得なかった。

 

NHKより

 

そんな竹中直人の秀吉が事あるごとに「御館様(おやかたさま)〜!」と呼び、尽くして尽くして尽くしまくるのが主君・渡信長だった。

主君の夢(天下統一)のために自身が身を粉にして働く。主君の夢は自分の夢。下心も野心も無く、ただピュアにつき進む秀吉が描かれる。

 

だからこの秀吉→信長への比類なき忠誠心も、私の中では「史実でもそういうものだった」と強固に形作られている。

時折、この時代を扱った作品や学説で、

「秀吉は明智光秀による謀反(本能寺の変)を事前に把握していた。その上で信長に敢えて伝えなかった。それによりチャンスをものにした(あるいは“秀吉黒幕説”とも)」

という立場に立つものがある。

 

私はこの立場と説を断固拒絶している。まったく許容することができないし憤りすら感じる。

それは同作中の竹中秀吉の忠誠心と1ミリも合致しないためだ。

 

チャンネル銀河より

 

信長俳優について熱く語ってしまったが話を少し進めて「信長の親族たち」を主要人物に据えた作品はあるだろうか?

真っ先に思い浮かぶのが前述の「江」。江は信長の姪である。

だが彼女は「信長の姪」としてクローズアップされるのではなく、長姉・茶々、次姉・初を含めた三姉妹としての驚異的なドラマ性に満ちた生涯があってこそ作品として成立たらしめた。

 

信長の息子たちはどうか?

信長には後継として育成していた嫡男の信忠がいたが、本能寺の変で斃れた。

次男・信雄(のぶかつ)、三男・信孝(のぶたか)はいずれも戦国武将として無能とされている人物ということもあり、ほぼ描かれてこない。

唯一、映画「清洲会議(2020年)にて、次男・信雄を妻夫木聡が演じていたくらいではないだろうか。(同作の主演は秀吉の大泉洋。信長はカメオ出演篠井英介

 

映画.comより

 

そんな訳だから信長の「孫娘」ともなると何かの作品に登場した記憶がないし、ましてやその存在すら知られていない。

 

見性寺にて

 

八重姫(玉雄院)

1588年、信長の次男・織田信雄(のぶかつ)の娘として伊勢国(現在の三重県)に産まれた八重姫。

3歳のとき、父・信雄が秀吉の怒りをかい領地を没収されて下野国(栃木県)へ(その後伊予国へ)。4歳のとき、父の家臣である土方雄久(ひじかたかつひさ)の子・雄氏(かつうじ)と許嫁になった。

12歳の時には雄久・雄氏親子が家康暗殺の容疑で常陸国茨城県)に追放されるも翌年、関ヶ原の戦いが勃発。東軍として功績のあった彼らは、父・雄久が能登国(石川県)に、子・雄氏が伊勢菰野に所領を与えられることになる。菰野の始まりである。

そして1603年、16歳のとき、八重姫は結婚し菰野に入った。

 

 

菰野町では郷土の偉人をマンガで語り継ぐべく実行委員を立ち上げ、町内在住の漫画家が2023年に『八重姫伝』を完成させた。

同作は菰野町図書館で借りることができるほか、町内の小学校の郷土学習で使われるとのことだ。

 

同作中、菰野に向かうため箱根の関所で家老が通行手形を忘れ、役人に止められる際、八重姫が織田家の家紋入りの薙刀を振りかざすシーンがある。役人は恐れ入って通行を許可するのだが、これは史実であるとのこと。

八重姫の背後に祖父・信長の姿が浮かび上がる描写は、同作の一番の見せ場である。

 

見性寺にて

 

初代菰野藩主の正室となった八重姫。25歳のときには息子・雄高(うじたか)が生まれる。

しかしその後の人生は側から見ると平穏なものではなかったようだ。

 

28歳のとき、夫・雄氏が大坂夏の陣に参戦した後も帰郷せず、京都の別邸に住むようになった。子・雄高は病気にかかり健康問題が生じる。ほどなくして夫・雄氏も病気にかかり、久しぶりに菰野に帰郷したかと思えば家督を自身が側室との間にもうけた子に譲ると言い出す。

 

これに(マンガの中では)ブチ切れて反対する八重姫。

そのかいあって息子・雄高に家督が譲られたものの、その数年後、夫・雄氏が京都で死去。八重姫は仏門に入り玉雄院となる。51歳のときであった。

 

依然として健康が優れない子・雄高。これを見て玉雄院は、京都にいた亡き夫・雄氏の孫(側室との間にもうけられた子の子)を周囲の反対を押し切り雄高の娘と結婚させて土方家の養子とし、菰野に迎える、という驚きの手を打つ。後の菰野藩3代目藩主・土方雄豊(かつとよ)である。

 

64歳のとき、子・雄高が死去。自身は92歳(1679年)で死去した。菰野藩を三代に渡り見守った生涯であった。

 

 

歴代菰野藩主と八重姫(玉雄院)の菩提寺である見性寺(けんしょうじ)を訪ねた。

近鉄湯の山線Ep.181参照)の菰野駅から徒歩5分、目の前に田んぼが広がる小高い丘にある。

 

 

菰野藩にとって最大級の功績を残し、また菰野の民に愛された姫だったのだろう。

歴代藩主に劣らない立派な墓石であった。歴代正室でこんなに立派なお墓があるのは八重姫だけである。

 

 

信長の孫として生まれ、縁あって菰野にやって来た姫は、この町を象徴するようなのどかな場所から今も、人々の暮らしを見守っている。

 

 

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Princess Yae, a granddaughter of Oda Nobunaga and the wife of the first lord of Komono clan

Ep.182

Princess Yae (1588-1679) was the wife of the first lord of Komono clan and built its prosperity.

And also she was a granddaughter of Oda Nobunaga, who was a most important person of the Warring States period.

Her life might have been unfortunate in one aspect, though people in Komono at that time much loved her.

 

Komono town government started a project to honor a great person in their region according to manga.

This tells us her legacy as a library book and teaching material in schools.

 

www.chunichi.co.jp

www.kensyouji.com