みんなの笑顔が三重(みえ)てくる Jima-t’s diary

「地域性」に光をあて、「違い」を学び、リスペクトし、楽しむというスタンスで四日市や三重の魅力を伝えていきます

全日本大学駅伝 2022

Ep.127

日市の「四」に区の「四」の意味を新たに加えても良いのではいか?

 

全日本大学駅伝についての話だ。

(Ep.121474参照)

 

 

私はこれまでに二度、この駅伝の4区を沿道で観戦してきたが、昨年、東京の友人(私よりも大学長距離界に詳しい)から

なんで7区見ないの?(なんで田澤見ないの?) 急げば間に合うよ

と(根拠もなく)言われたのがずっと心に引っかかっていた。

 

 

それで思い出したのが、学部生の頃、ウェルネスの授業で先生が話していたことだった。

その先生はその週末、旧・東京国際女子マラソンに出場する高橋尚子を観に行くとのことだった。

「○○で観戦して、そのあと山手線に乗って□□駅で降りて、△△で観戦して・・・」

という計画で、計3回もQちゃんを観るのだと言っていた。

(なぜそんな雑談を覚えているのか? と思うかもしれないが、なぜか印象に残る些細なエピソードというのは人生においてある)

 

そんなことが可能なのか!?

と当時の私は直感的には驚いたが、ただよく考えると東京都心を舞台にした折り返しコースで、山手線という特異な手段を用いればできるものなんだな、とも思い直した。

 

ちなみにその大会とは、高橋尚子が下馬票を覆して感動的な復活優勝を遂げた(かつ結果的に最後の輝きとなった)2005年大会の話である。

 

高橋尚子選手 時事ドットコムより

 

翻って全日本大学駅伝ではどうか?

熱田神宮から伊勢神宮へ向かって国道23号線(通称「にーさん」)を走る“ワンウェイコース”であるが、並行して走るのは近鉄・JR・伊勢鉄道である。

これらを駆使すれば、全日本でも「2回」観戦できるんじゃないか? 私は計画を練った。

 

 

観戦後、すぐに電車に乗って次のポイントに移動するためには駅の近くが好ましい。

という訳で第1の観戦場所はJR四日市駅近くの交差点に決めた。

 

ランナーの通過予定時刻30分前に着くと、人はまだらだった。

 

 

地元の理容室「ヘアーサロン青山」のご主人が

「(私のお店の前の)花壇の中にマンホールがあるからそこを足場にしていいよ。その方が近くで観れるでしょ」

と勧めてくれた。

 

なんて優しいんだ!

お言葉に甘えてベストポジションを確保する。

 

9時43分、最初のランナーがやって来た。

駒澤大学の山川拓馬選手(1年)だ。

目の前を通り過ぎる彼に拍手で応援する。

 

 

快晴の下、その後も続々とやってくるランナーたち。

今大会は主催者から声を出しての応援は控えるよう言われていたのだが、みなさん結構声出ししていた。

 

9時53分頃に最終ランナーの観戦を終えた私は、700m離れたJR四日市駅へ急いだ。

10時9分の快速みえに乗るためだ。

 

フェリー乗り場ではなくJR四日市駅

 

相変わらず寂しい佇まいのJR四日市駅Ep.7参照)。

考えてみると、私がこの駅を利用するのは2008年、青春18きっぷの旅をしていたあの時以来だと気付く(Ep.0参照)。

 

なんて懐かしいんだ。当時の私にとっては旅で訪れた地方都市の一つに過ぎなかったこの街が、今では居住地になっているのだ。

改めて、14年という月日に思いを馳せて、、いる場合ではなくさっさとホームへ急ぐ。

 

 

無事に快速みえに乗った私はランナーを追い越し、再び待ち構えて2回目を観ようというわけだ。

驚くべきことに、私と同じように4区の観戦から快速みえに乗った人は他にも20人くらいいた!? みなさん、同じことを考えてたんだね。

 

車中、大学生と思われる若い男性・女性はみな、駅伝ファンだった。

スマホでリアルタイムのネット中継を観ていたり、速報サイトを見ていたり。

 

「田澤にはムリだろうけど近藤には勝って欲しい」

「馬鹿っ。中央学院に抜かれんじゃねーよ」

 

などと声が聞こえてくる。

みんな、アツいね!

 

 

大半の駅伝ファンの乗客は津で下車した。つまりは6区を観るということか。

私はここから各駅停車に乗り換え、さらに南下する。

なぜか? もちろん田澤廉を観るためだ。

下車するのは高茶屋駅。田んぼの中にあり、普段は無人駅だ。

 

高茶屋駅となりの老舗和菓子屋「正和堂」のみたらし団子は注文を受けてから焼く

 

ここから駅伝コースの23号線まで約1kmを歩いて向かう。

高茶屋駅で下車した駅伝ファンは私の他にもいたが、みなさん私とは別の方向に歩き出した。

7区の中継点で観るのだろうか?

 

 

あらかじめ計画していた7区の観戦ポイントに、ランナー通過予定時刻30分前に到着。

見通しの良い直線。人も多くなく穴場かもしれない。

 

 

監督車が通り過ぎる。本日見るのは2回目だ。

青学の原監督は俯きスマホを見ており、駒大の大八木監督は口を手で隠してスマホで話していた。

トップのランナーがやって来た。もちろん、駒澤大学である。田澤廉(4年)である。

 

 

これぞまさに独走。

2位以下をぶっちぎりで離し、日本人学生長距離史上最強ランナーが走り去って行った。

 

 

最終ランナーの通過を待って今大会の私の沿道での観戦は終わった。

私は駒澤大学のファンなのですこぶる上機嫌だった。

 

田澤廉選手 月間陸上競技 HPより

 

大会前、田澤は7区を走るのか8区なのか。優勝を狙う他チームの監督たちは思案しただろうが、おそらく7区と思ったはずだ。

だから今大会の7区は田澤とのタイム差を最小限に抑えるべく、近藤幸太郎(青学大)、フィリップ・ムルワ(創価大)、平林清澄(國學院大)というエースが集結した。

 

ただ終わってみれば田澤が従来の区間記録を43秒更新して区間賞を獲得。2位に2分半近くの差をつけてアンカー8区に襷を渡した。

自身の絶大な実力をもって他校のエースを呼び寄せ、潰した。

彼にしかできないことだった。

 

日刊スポーツより

 

田澤の真に驚くべきは、とどまるところを知らない成長にある。

2年次に全日本のアンカーとして東海大を逆転して駒大に6年ぶりのタイトルをもたらし、3年次はトラックの10000mで日本選手権2位となり、日本歴代2位の記録も樹立。4年生になった今年は日本代表としてオレゴン世界陸上に出場。

 

学年を経るごとに、より速くより強く、実力と実績を積み増している。

世代のトップ選手として駒大に入学しながら、成長という点でも田澤が一番なのだ。

 

月間陸上競技 HPより

 

今でこそ鬼の強さで幾度目かの黄金時代に突入した駒澤大学だが、田澤入学前の2018年以前は様相を異にしていた。

中村匠吾(Ep.42参照)、村山謙太という強力な世代が卒業したのち、2015年から2019年にかけての丸5年間で大学駅伝の優勝はゼロ。

1997年の出雲での大学駅伝初優勝以来、コンスタントにタイトルを獲得してきた大八木監督と駒大にとって、それは紛れもなく暗黒時代と言えた。

 

スター選手も出ないしチーム全体の力もない。

颯爽と登場した青山学院大学が時代を謳歌し、対抗馬は東海大学東洋大学だった。

戦国時代とも言える昨今の大学長距離界で、早稲田大学山梨学院大学中央大学順天堂大学日本体育大学といった名門校・強豪校たちはすでに優勝戦線から遥か後方に退いてシード権争いへ。

駒大も、彼らと同じところまで落ちても何も不思議ではなかった。

 

大八木弘明監督 毎日新聞 HPより

 

そんな駒大にとって復活のキーマンが田澤だった。

いや“キーマン”というよりも“全て”と言っていい。

次元の異なる実力を持つこの男が入学して以来、大八木監督は勝利への強い情熱を取り戻し、在学メンバーの実力が底上げされ、田澤に憧れた下の世代の有力ランナーたちも入学。

正のスパイラルを誘起し、強大な戦力を整備して再び大学長距離界の最前線に帰還した。

 

ただ戻ってきたわけではなく、過去の自らやライバルの青学をも遥かに上回る強さとなって戻ってきた。

 

読売新聞 HPより

 

8区は昨年に続き花尾恭輔(3年)。大八木監督が自信を持っているランナーだ。

終始一人旅で悠々と走っていたように見えたが区間賞を獲得。歴史あるこの区間で日本人歴代4位の好記録だった。

 

駒大の全日本のアンカー8区といえば、私にとっては深津卓也(2006〜2009)、窪田忍(2010〜2013)が思い浮かぶ。特に窪田は田澤の入学前まで駒澤史上最強ランナーだった。

 

窪田忍選手(2013年) 朝日新聞 HPより

 

2年次は柏原竜二東洋大)の魂の追走を振り切り、3年次は服部勇馬(東洋大)を大逆転し。ドラマチックな思い出を残してくれた窪田は3年連続で優勝のゴールテープを切った。

 

ふと思い立って当時の窪田の記録を調べると、今回の花尾の方が上回っているじゃないか。厚底シューズの恩恵を差し引いても、これには驚く。

チームの2番手でも窪田に匹敵する。来年、花尾がみたび8区に出走し、自身3度目の優勝のゴールテープを着ることがあれば、窪田を超えたと言えるかもしれない。

 

田澤にトップで襷をつなげた6区の安原太陽(3年)も快走した。

 

安原太陽選手 月間陸上競技 HPより

 

昨シーズン、駒大が箱根駅伝2022で優勝できなかった原因は花尾と安原にあった。

2区で田澤がトップで襷を持ってくることが確定的となり、TV中継で3区で待機する安原が映し出された際、その尋常じゃなく強張った表情に不安を覚えた駒大ファンは多かったはず。

 

案の定、安原はリードを守れず青学大と東京国際大に逆転されて2分離され、4区の花尾もずるずる引き離されてしまい青学大と3分差。この3、4区でそれぞれ区間17位、区間9位と沈んだことで、駒大の優勝は困難になった。

けれども二人を責めることはできない。なぜなら昨年の全日本で駒大が優勝できたのは(田澤は別として)この二人のおかげだからだ。

 

そんな安原が今回の全日本の6区で区間4位の好走。

だが注目すべきは、前を追いかける好条件の展開で出した昨年の自身の記録よりも、トップでもらって終始単独走だった今年の記録の方が良かったことにある。

彼もまた、この一年で確実に成長していたのだ。

 

ゴールテープを切る花尾恭輔選手 日刊スポーツ HPより

 

最後は花尾が2位國學院大に3分半近くの差をつけてフィニッシュ。終わってみると駒澤大学の圧勝で、駒大と下々の物たちの争い、という様相だった。

 

「今シーズンの駒澤大学は史上最強」という評価は間違っていない。

2022年の全日本大学駅伝はこうして幕を閉じた。

 

 

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All Japan University Ekiden Championship 2022

Ep.127

All Japan University Ekiden Championship was held from Nagoya to Ise-jingu shrine, way to Yokkaichi, so long 106.8km.

In this year, I came up with watching the race "twice"!

 

The 1st location was nearby JR Yokkaichi station as the 4th section.  As soon as after seeing, I chased and passed runners with train.

Thus, I realized to watch at 2nd location, Tsu city as 7th section.

This plan made us have a wonderful time.

 

In this year’s race, my favorite team, Komazawa university won, third straight victory!

They must be the best team ever in university ekiden.