Ep.7
近畿地方の都市ではしばしば、JRよりも私鉄の駅の方が栄えているということがある。四日市もそれに該当する。
この街の中心は近鉄四日市駅であり、近鉄百貨店や1番街商店街などは人々で賑わっている。
一方、中央通りを介して1kmほど離れたJR四日市駅は、唖然とするほど利用客がおらず、商業施設もない。
12年前、私が青春18 切符の旅で初めてこの駅に降り立ったときは、「知名度の高い都市の割に駅はすごく小さいんだな」と感じた。
その様相は当時から全く変わっていない。
四日市に遊びに来てくれた友人が、
「これフェリー乗り場?!」
と言っていたが、言い得て妙である。
人口30万人を擁する地方都市の玄関口としては、なんとも寂しい限りである。
なお四日市を含む伊勢湾沿いのエリアは、近鉄名古屋線とJR関西本線が、名古屋から並んで出た後、共に南下していくのだが、彼らはまるで双頭の龍のように絡み合って走っている。
例えば四日市市の北部にある冨田(とみだ)駅からは、JRが東側(海側)、近鉄が西側(内陸側)を走るが、四日市駅より南では両者の位置関係が逆転する。
JR四日市駅を含む海側の鉄道沿線(JR、近鉄に限らず)は、いずれも人通りや交通量、商業施設は極端に少ない。
工場が多いため、煙突や倉庫などの建造物は目立つものの、あまり元気に可動しているようには見えないのだ。
そして私は個人的に、この辺りを『オールド四日市エリア』と呼ぶことにしている(インドの首都デリーに因む)。
しかし私はこの『オールド四日市エリア』が、けっこう好きだ。
シャッターのしまった商店、海に突き出た工場、稼働する煙突、雑草が生えた空き地、うらさびれた感、くたびれた感、儚さを感じる。
好きと感じる、その理由の源泉を長らく考えていたのだけれど、先日自転車でこの地を巡っているとき、突然気付いた。
本当に遠い遠い昔の記憶なのだけれど、この『オールド四日市エリア』は、10歳になるまで暮らしていた広島県竹原市の景色に似ているのだ。
あの街も、瀬戸内海に沿ってJR呉線が走り、線路よりも南側には工場(製錬所)や煙突があった。海に面していて、金属構造物の腐食が見られ、潮風やほのかな磯の香りまでなんだか似ているような気がしてきた。
『オールド四日市エリア』
それは私の記憶の深くに眠っていた大切で美しい情景を思い起こしてくれたのだった。
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“Old Yokkaichi area”
Ep.7
Center place of Yokkaichi city is definitely Kintetsu Yokkaichi Station.
Many citizens walk street and enjoy shopping.
On the other hand, JR Yokkaichi station which is 1km away from Kintetsu Yokkaichi Station is so tiny station.
Around a railway line which runs along sea is no commercial area.
We can see some factories or storehouses like old fashion.
I call this “Old Yokkaichi area”.
And I like this area.
Because I consider “Old Yokkaichi area” resembles Takehara city, Hiroshima where I grew up until 10.
It makes me bring back my precious and beautiful memories.