Ep.82
風変わりな名前を持つ鈴鹿10座の一つ、日本コバ(934.2m)。
その名称には諸説あり、林業に関する木場(コバ)、九州地方の焼畑の呼称「コバ」、休憩場所の意味の「コバ」などがあるらしい。
山の特徴はというと、滋賀県東近江市が発行している紹介文によると
「沢、岩場、洞窟、湿地、深い森など冒険心をくすぐられる山」
とのこと。
鈴鹿10座登山ではすっかり起点になった「道の駅 奥永源寺渓流の里」にクルマを停めて登山口に向かう。
「如来堂」という所が今回の登山口だが、どこにあるのか全く分からない。Google Mapで出てこないし看板もない。
しばらく迷ったあげく、近くに小さな消防署(出張所)があったので朝も早くから消防車の整備をしていた2人の消防士の方に道を聞く。
するととてもていねいに教えてくれた。
「気ぃつけて行きやー」
これは分かりにくい ! さすが鈴鹿10座。こういうところが全然フレンドリーじゃない。
11月にもなると色付き始めていた。落ち葉を踏み歩くときの
カシャカシャ
という音が心地よい。
1時間半で山頂に到着。
全く展望が開けていないのが残念だが、小さな広場のようになっていたので昼食はとりやすかった。
下山を開始する。
帰りも行きと同じ道を歩くつもりだったが、歩き始めてすぐに記憶に無いルートであるとの確信に至る。ピンクテープに従って来たのだけれど、そもそも違うルートのようだ。
またしても迷う。私は方向音痴なのだ。
すると、私が行きの途中で追い越した人がやって来たのでその人に道を聞いた。
私よりもひと周りくらい年齢が上のその男性は、自ら先導して教えてくれた。どうやら私は途中の分岐の看板を見落としていたようだ。
(その人は自らが降りる予定のルートを認識しつつも、違うルートを様子見に来たようだ)
互いに下山ルートは同じだったため、成り行き上、その人とお話ししながら一緒に降りることになった。
その人は滋賀の野洲市から来ており、純粋な山登り目的では15年ぶりの登山とのことだった。山登りをしないこの15年間は、合気道→柔道→自転車旅、としてきたらしい。
「けれどずっと趣味で続けているのがコウブツサイシュウです」とのこと。
「コウブツサイシュウ?」
鉱物採集だった。
黒曜石を求めて秋田へ、輝石を求めて蔵王へ、翡翠を求めて糸魚川に遠征し、その過程での登山はしてきたとのこと。
「めちゃくちゃアクティブですね!?」
またその人は大学時代に数学を専攻していたとのことで、私がケミカルエンジニアだと知るや、第一原理計算やMI(マテリアルズ・インフォマティクス)について尋ねてきた。
私は過去にそれらのツールを利用したことはあるが、その原理や詳細までは全く理解していないため、その人が満足するような答えはできなかった。
しゃべり出したら止まらないその人は、私の地元・筑波山にある武道具店(私はこのお店を知らなかった)や滋賀の名産・鮒寿司についても縦横無尽にお話してくれた。
道中、その人が8割くらいはしゃべっていた。
このように、しゃべりでは完全にその人のペースだったが、歩くペースは私が主導していたようだ。
というのも、2人で話しながらも私は自分のペースで歩いていたので、最後の方、その人は息切れしていた。
ちょっと悪いことをしたかな?笑
と心の中で苦笑しつつも、ゴール地点の登山口にたどり着いた。
お互いに駐車場は異なる所だったので、その人とはそこで別れた。
道に迷って助けを求めたことから始まった、そんな一期一会の日本コバだった。
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日本コバ Mt. Nihon-koba
Ep.82
A man I asked to help due to get lost in 日本コバ Mt. Nihon-koba (934.2m), one of the Suzuka 10 za was an intelligent and talkative guy.
On the way down the mountain, I talked with him about lots of things, each hobbies, jobs, travels and so on. It was a curious experience.
I got lost, that’s why let me make memories of “once in a lifetime”.
Achievement ;
Suzuka 10 za 9/10