みんなの笑顔が三重(みえ)てくる Jima-t’s diary

「地域性」に光をあて、「違い」を学び、リスペクトし、楽しむというスタンスで四日市や三重の魅力を伝えていきます

気球 on 三重

Ep.83

みなさんは「気球」について深く考えたことはありますか?

 

とりわけ最も一般的な「熱気球」については、「温かい空気は上方へ昇っていく」という性質を利用した単純なものだ。

私はケミカルエンジニアだが、当初これをなかなかイメージできなかった。

 

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そんなある朝、いつものようにチャリで会社に向かっていたところ、はるか前方に煙突からモクモクと出る蒸気が見えた。

 

そしてこの光景にピンときた。これは熱気球の原理と同じじゃないか? と。

温かい蒸気は上方へと昇っていく

もちろん、煙突の場合は蒸気が狭い筒内(塔内)で下方から押出されるという作用がはたらくものの、それでも吐出口から出た後も蒸気は上へ上へと昇っていく。

 

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煙突から出る白い蒸気というのは「可視化」されたものである。だからそこでふるまっている気体分子の様子を明確にイメージできた。

熱気球の場合も、ガスバーナーによって大気中の窒素や酸素や二酸化炭素が熱せられて温まり(=気体の分子運動が激しくなり)、膨張しようとし(=上へと昇ろうとし)、それによって気球内側の球皮を物理的に押し上げている様が想像できる。

 

高校生のとき、物理の先生が

「物理はイメージだ」

と言っていたが、まさに言い得て妙だ。

 

気体の動きも、力が作用する向きも、電流も磁界も波動も、あらゆる物理現象は目に見えなくてイメージしづらいから苦労する。理解が深まらない。

けれどひとたび可視化されれば、腹落ちしやすいのだと思う。

 

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話を気球に戻そう。

なぜ「気球 on 三重」なのかというと、

角幡唯介氏(極地探検家&ノンフィクション作家)のエッセー『探検家、36歳の憂鬱』を読んでいたところ、神田道夫さんという気球冒険家を紹介したエピソードが心に残り、続いてその神田さんとのある冒険の日々を綴った石川直樹氏(登山家&写真家)の『最後の冒険家』を読んだからだ。

神田道夫さんは熱気球で高度世界記録や長距離世界記録などを樹立し、2008年、栃木県から出発した太平洋横断の途上、消息を絶った)

 

そしてこの本の中で、本論とは関係ないが(かつ正確な文章表現は忘れたが)「東海地方の気球の聖地」と紹介されていたのが桑名市の長島町だった。

なばなの里(Ep.32参照)や三重なばな(Ep.81参照)や木曽三川Ep.79参照)のあの長島である。

 

そう言われると、私は前に桑名を訪れていたとき、上空から降下してくる気球を見たことがある。

そんな長島は「商業気球」や「競技気球」に携わる人にとっては有名なようだが、実は「冒険気球」においても、ある歴史的快挙の場になった。

 

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1981年11月10日

ベン・アブルッツオ、ロッキー青木、ラリー・ニューマン、ロン・クラークの4人は、ヘリウムガスを充填した「Double Eagle V」に乗り込み、気球による太平洋横断を試みた。

その出発地点になったのが三重県長島だ。

彼らは3日半、8,383kmを飛び、カリフォルニア州メンダシーノに無事到着。人類初の快挙を成し遂げたのだ。

 

これを記念したモニュメントが、ナガシマリゾートの「長島温泉」内にある。

 

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モニュメントにはこう記されていた。

『1981年11月10日 この地 長島温泉より気球で太平洋横断の快挙を成し遂げた4人の冒険野郎達をここに記念する 1985年7月』

 

 

高度10,000mでは西から東へジェット気流が吹いているから、それにのれば太平洋を横断してアメリカに到達できるだろう

 

と理論的には言えても、

「それじゃあ私がそれを証明しましょう」

とはならない。普通、ならない。

 

冒険家・探検家とは、比類なき情熱を持ち、周到に計画をたて、完璧な準備を整え、最上級の勇気と共に目的を達成した者たちだ。

理論や自説を証明し、当時の地図の空白部分を埋めるという物理的な意味での世界を拡張しただけではなく、人類の集合知をも拡張した者たちのことだ。

だから昔から、彼らには最大級の敬意が表されてきた。

 

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この長島から、

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まずは垂直上昇して、

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一路、東へ

41年前の冒険に想いを馳せてみる。

彼らはこの長島から、まずは垂直に昇って昇って昇って、ナガシマスパーランド揖斐川四日市コンビナートも伊勢湾も鈴鹿山脈も見えなくなるまで昇って、そして風に吹かれて一路、東へ。

 

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彼らは長島から東京を目指したわけではない。アメリカ合衆国の西海岸を目指したのだ。

途方もない計画と旅路に目眩がする。

 

3日半(84時間)で8,383kmだから、(水平方向の)平均速度は時速100kmだ。

気球に何かしらのトラブルが起きたら、墜落して太平洋に叩きつけられて海の藻屑になってしまうじゃないか。

他方で、「時間を持て余す」問題もあったことだろう。

垂直方向のコントロールはヘリウムガスで行うが、水平方向については気球なので風まかせだ。操縦者がやることは限られている。

 

だから起床しているとき、彼らは陽気に歌を唄ったりすべらない話をしたり、いっせーのー・イチ!、などをしたりして過ごしていたのかなと想像する。

 

いや高度10,000mだと凍えるほど寒いだろうから、厚手の防寒着や手袋をしているはずで、それだといっせーので上がった指が何本か分かりづらいだろうな、などと妄想する。

 

とにかく、驚異的な精神力の持ち主たちだったというのは間違いない。

 

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今一度、4人の冒険野郎達の顔を見てみる。

この不敵な笑みを見てほしい。

 

彼らの偉業は人類の歴史に永遠に刻まれたのだ。

 

 

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Hot air balloon on Mie

Ep.83

Have you ever considered the hot air balloon?

Nagashima-cho, Kuwana city was a historical place.

 

In 1981, 4 guys got on their gas balloon and left here.  Their destination was California and their purpose was “trans-Pacific”!!

How incredible journey was!

 

Finally, they did it.  3 and half days later, they landed in west coast of US.

Crossing the Pacific Ocean by a gas balloon was for the first time achievement by humankind and new world record “the longest distance”.

 

I visited a monument inside Nagashima resort.

According to it,

On November 10, 1981, from this place, Nagashima, 4 guys, adventurers made successful crossing the Pacific Ocean by a gas balloon.

Honored their achievement here.  July, 1985

 

natgeo.nikkeibp.co.jp

 

en.wikipedia.org