みんなの笑顔が三重(みえ)てくる Jima-t’s diary

「地域性」に光をあて、「違い」を学び、リスペクトし、楽しむというスタンスで四日市や三重の魅力を伝えていきます

513ベーカリー

Ep.168

竹原市に住んでいた幼稚園児のときだったと思う。

母と二人、竹原駅前の横断歩道を渡るため歩道で信号が青になるのを待っていた。

 

すると私たちの隣の車道にスクーターがやって来て、赤信号で停まった。ヘルメットをつけていない若いお兄さんだった。

改造スクーターなのだろう。停車中、けたたましいエンジン音を鳴らせていた。

 

すると次の瞬間、

こらぁぁぁーーーーーー!

と警棒を持った警官が突然、背後からスクーターを捕まえようと走り出してきた。

 

これに慌てたにいちゃんは、まだ赤信号なのにスクーターを急発進させ、圧倒的なスタートダッシュを決めて逃げきったのだった。

そして警官は追いかけるのを諦めた。

 

 

一部始終を目撃していた幼い私は、とても怖いと思った。

改造スクーターのエンジン爆音がまず怖いし、飛び出て来た警官の剣幕も、信号無視で逃げたにいちゃんの行為も怖かった。

 

今振り返ると、そのにいちゃんはずいぶん間抜けだったな、とも思う。

ノーヘルで爆音を響かせ、なおかつ自身は交番のわきで信号待ちしていたことに気付いていなかったのだから、交番勤務の巡査としては「舐められた」もんだと思って飛び出て来たに違いない。

 

竹原駅前(2009年1月) 交番は左側にあった wikipediaより

 

そんな出来事があった竹原駅前の交番だが、その向かい側にあったのが「リトルマーメイド」である。

話の持っていき方が不自然であることは認めるが、とにかく向かいにあったのは「アンデルセングループ」がフランチャイズ展開しているパン屋だった。

 

リトルマーメイド HPより

 

広島市に本社を持つこのパン屋が広島県内に多くの店舗を持つことは事実だが、もはや全国展開されているため、他地域でもたまに見かける。

だからリトルマーメイドを見つける度に私は、この幼少期の一連の出来事をいまだに思い出すのだった。

 

ハンス・クリスチャン・アンデルセン wikipediaより

 

リトルマーメイドに関してもう一つ。

“辺境ライター”高野秀行さんの著書『移民の宴 日本に移り住んだ外国人の不思議な食生活』(2015年)は、日本在住の外国人たちが日頃何を食べているのかに迫ったルポだが、ここに興味深い記述がある。

 

それは3.11の震災と福島第一原発の爆発事故後、都内在住の各国の人たちはどういう行動をとったかという章にて、

デンマーク大使館員は本当に原発が危なくなった場合に備えて、広島に逃げる準備をして」いたとのこと。なぜ広島に行くのかと訊いたら

「デニッシュベーカリーのアンデルセンが理由」だとのことだったらしい。

 

極東の島国で未曾有の天災と人災に見舞われ、避難先として頼った場所は、世界的な童話作家であり母国の偉人である男の名前を冠したパン屋の本社がある地だったのだ。

 

「まさか被曝を避けるためにヒロシマに行く日が来るとは思わなかっただろう」

と同著書では締められている。

 

リトルマーメイド HPより

 

幼少期からの記憶に登場するもう一つのパン屋は「ポンパドウル」だ。

私は祖父母の家が横須賀なので、追浜駅直通の商業施設「ヨコサン」の中に入っているポンパドウルには物心つく前から行っていた。

ポンパドウルは横浜発祥のパン屋である。

 

ポンパドウル 追浜店

 

紅に黒抜きでPOMPADOURと書かれ、その黒文字の柄も昔から好きだ。

印象的な紅は『ポンパドウル・レッド』と言うらしい。

 

たしか「ミニボール」という商品名だったと思うが、私はこれが好きだった。

一般的なあんぱんより2回りほど小さなサイズで、表面が滑らかだったから少し揚げていたのかもしれない。中の餡も、かりっとした少し硬めの食感も、サイズ感も良かった。

少なくとも20年前にはあったのだが、今はもう販売されていないようだ。

 

 

さて、三重県にも同県発祥のパン屋がある。

513ベーカリー」である。

513は「コイサン」と読む。

ただしリトルマーメイドやポンパドウルのように全国展開は果たしておらず、ローカルの域は出ていない。

 

513ベーカリー HPより

 

513ベーカリーは株式会社コイサンズが運営するパン屋で、三重県内に10店舗存在する。(県外では愛知に1店舗のみ。23年8月現在)

コイサンズはまたコメダ珈琲店も運営している。

 

パンの駅 513BAKERY四日市菰野

 

私の住まいの近くにも513ベーカリーはあるがよく行くわけではない。

ただパンは美味しいしお店も好きだ。

 

このパン屋のユニークな取り組みの一つは、地元三重を推し出した企画を催しているところだ。

県南部・志摩地方の特産の食材を利用した「しまパン」が定期的に販売されており、これは観光誘致を図る志摩市との協定に基づくものらしい。23年9月時点で第7弾が販売中だ。

 

ゴマサバフライコッペ、志摩あおさ豚ポークウインナーフランス、南張メロンサンド 2022年6月9日の中日新聞記事より

 

三重県のローカルパン屋「513ベーカリー」。

今後彼らがリトルマーメイドやポンパドウルのように全国展開を目指すのか、あるいは「おにぎりの桃太郎」(Ep.17参照)や「家族的美食屋あじへい」(Ep.111参照)のように三重県限定でがんばるのか。

どうも後者のような気がするので、三重に観光で訪れる人にとってはぜひおすすめしたいお店の一つだ。

 

 

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513 BAKERY(KOISAN BAKERY)

Ep.168

“513 Bakery” is the local bakery restaurant of Mie and has 10 stores in this prefecture.

One of their uniqueness is the collaboration with Shima city.

They create their original breads “Shima-pan” inspired by this region’s specialty.

It’s so curious ones!

 

www.513bakery.jp

www.littlemermaid.jp

www.pompadour.co.jp

www.chunichi.co.jp