Ep.173
子どもの本の専門店「メリーゴーランド」
少し古びたビルに入る可愛らしい店構えと夕方暗くなってから辺りを照らす優しい暖色系のランプは、松本街道のランドマークとなっている。
店内には絵本や児童書に溢れている。
玩具や雑貨もある。カフェやバーも併設されている。
店主の増田喜昭さんは絵本業界では有名な方だ。
1976年にメリーゴーランドを開店した後、子どもの本の普及活動をされている。
お店のスタッフの方もプロフェッショナル。蔵書を聞いても、お薦めを尋ねても応えてくれる。
店舗から徒歩5分の場所では毎週土曜日に「こどものまち図書館」を開催している。
この場所の前を初めて通ったとき、壁に描かれたアートを不思議に思ったものだった。
古本市を訪れたときに初めて知ったが、この家は築100年以上の増田さんの生家だったのだ。
先の5月には古書市が開催されていた。
訪れると絵本を中心に少し昔の本がたくさん販売されていた。数冊を購入。
五味太郎さんの『みんながおしえてくれました』(1983年)についてはご本人の直筆サインがされていた。増田さんと五味さんは友人だそうだ。
そんな訳で五味太郎さんのサイン入り絵本を100円で入手できてしまった。
古書を探しているとき、長倉洋海さんの写真集を見つけた。
私は以前、長倉さんの著書を読んでその内容に感銘を受けていたので
「なぜ長倉さんの本がここに??」
と驚いた。が、後に調べてみると児童向けの写真集や著書も多く出している方だった。
長倉洋海(1952年生)さんはフォトジャーナリストで40年近く世界の紛争地や途上国を中心に取材し、作品を発表している。
中でもアフガニスタンとの縁は深く、故マスード司令官(2001年没)と行動を共にしたり市民の姿を紹介したり、山岳地帯に暮らす子どもたちが通う「山の学校」の支援など、長く活動されている。
ヒンズークシ山脈やパンシール渓谷
アフガニスタンの景観の美しさは常軌を逸している。
私はそれを長倉さんの写真を通して知った。
古書市で入手したのは『きみが微笑む時』(2004年)。
長倉さんが訪れた旅先、途上国や少数民族の子どもたちを中心に、彼らの笑顔が溢れている。本当に素晴らしい写真集。これを入手して以降、私は何度も繰り返し見ている。
そんなこんなをネットで調べていると、今年の9月に「メリーゴーランドLECTURE」で長倉さんの講演があることを知った。
メリーゴーランドLECTUREとは、年に数回メリーゴーランドが開催している講演会で、これまでに前述の五味太郎氏や谷川俊太郎氏(詩人)、江國香織氏(小説家)、石川直樹氏(登山家&写真家、Ep.83参照)、などがゲストで呼ばれている。みな増田さんの友人や知人なのだろう。
そんな訳で長倉さんの講演に応募し、参加してみた。
著書を読んでだいたいの人柄は分かっていたつもりだが、実際の長倉さんも柔和で物腰が柔らかかった。
新刊の『元気?世界の子どもたちへ』(2023年)での写真の紹介を中心に、これまでに訪れた130を超える国々とそこで出会った人々の話をされた。
自身の旅で見たこと、考えたこと、感じたこと。
世界を見つめる視線の強さと、その土地で暮らす人々、何よりも子どもたちへの愛に溢れた方だった。
----------------------------------------
“Merry-Go-Round”, children’s bookstore of Yokkaichi
Ep.173
“Merry-Go-Round” is the children’s bookstore in Yokkaichi.
Since 1976, they have treated picture books and children’s toys and also organized private library and author’s visit.