Ep.164
ノンフィクションやエッセーをよく読む。
扱われているテーマや著者に感心があるから読むわけだけれど、中にはその著者が書く文章が好きだからという理由で読むことがある。
文体や表現やリズム。そこから立ち昇ってくる著者の感性や人間的な魅力。
その文章に憧れ、たまに真似してみたいとすら思うことがある。
私にとっては以下の人たちがそうだ。
高野秀行(辺境ライター、ノンフィクション作家)
角幡唯介(探検家、ノンフィクション作家)
近藤康太郎(新聞記者、ライター)
中村紘子(ピアニスト)
(但し小説家は除く)
この中で一人だけ「ライター」ではない人(文章を書くプロではない人)がいる。
故中村紘子さんだ。
上記の人たちの中でも私は中村さんの文章が一番好きだったりする。
他の4人のように技巧や理屈に走らないところが良いと感じているのかもしれない。当然だ。ピアノの傍ら書いているのだから。
私は中村さんの著書はすべて読んでいる。
中でも『ピアニストという蛮族がいる』が一番好きだ。
自身も含め世の中のプロピアニスト、またそれを目指す若者たちのピアノ漬け(練習漬け)の日々や世間一般との感性のズレを指して自虐的に「私たちは蛮族」と称した。
クラシック史に名を刻む大ピアニストや黎明期の日本人ピアニストに関する可笑しさと驚きと悲劇に満ち溢れたエピソードの数々。
本作を読むと、私たちは“ピアニストという種族”の人たちに多大な感心を持たずにはいられない。
またそんな彼らを”蛮族”へと導いてしまう“ピアノ”という魔性の楽器についても。
世界的なピアノコンクールの審査員としても数多くの経験がある中村さんが(『チャイコフスキー・コンクール ピアニストが聴く現代』『コンクールでお会いしましょう―名演に飽きた時代の原点』など参照)、審査員長として心血を注ぎ、世界の著名なピアノコンクールと肩を並べる存在にまで育てあげたのが「浜松国際ピアノコンクール」だった。(恩田陸の2016年の小説『蜜蜂と遠雷』のモデルになった)
審査員(国際的に名声を得ているピアニストたち)へのオファーの手紙の文面から会場へのお出迎えの仕方まで、自身の経験を惜しみなく監督・指導したとのことだ。
ところで浜松市がこのピアノコンクールを1992年に創設した理由の一つは、この街が「日本一の楽器の街」だからだ。
日本が世界に誇る楽器メーカーの発祥や本社がこの地にある。
だから「浜松市楽器博物館」があるのは必然かもしれない。
世界中のありとあらゆる楽器のホンモノが1500点以上展示されている(収蔵資料は3300点とのこと)。
私は袋井に住んで以来浜松が好きなので、この楽器博物館も3回訪れている。
三重県の菰野町にも小さな楽器の展示館がある。「菰野ピアノ歴史館」である。
19世紀ヨーロッパの希少なピアノが展示されているだけでなく、実際に弾くこともできる。
歴史館ではピアノを収集し、調律師に修復を依頼することで当時の音色を復活させてきたとのことだ。そしてピアノ調律技術の継承も本館の目的の一つとあった。
菰野町の静かな場所にある2021年に開館したばかりの小さなピアノの展示館は、ピアノや音楽を愛する人たちを今後いっそう惹きつけそうだ。
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The Komono Piano Museum
Ep.164
“The Komono Piano Museum” has opened since 2021. Lots of old valuable pianos which has been made in Europe 19th century are exhibited and visitors can play these ones.
They also host mini concert and inheritance of piano attunement.
This tiny museum give music lovers wonderful time.