みんなの笑顔が三重(みえ)てくる Jima-t’s diary

「地域性」に光をあて、「違い」を学び、リスペクトし、楽しむというスタンスで四日市や三重の魅力を伝えていきます

萬古焼 土鍋・急須編

Ep.24

萬古焼は19世紀中頃、中興の祖・森有節の時代には美術品として西洋から高く評価された。

 

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古萬古(左)と有節萬古(右) 四日市市立博物館HPより

しかしながらその後、明治時代末期と太平洋戦争の2度に渡り、萬古焼は不況や対米輸出の減少から存続の危機を迎える。

結果的にこの危機を乗り越えられたのは、先人たちの市場のニーズに応えた改良と、強みを生かした製品への展開だった。

 

これは今なお続いており、萬古焼が全国に誇る最大の特徴となっている。

 

<土鍋>

私たちの身近にある萬古焼。その最たるものは「土鍋」だ。

というのも、土鍋における萬古焼のシェアは80%以上なのだ!

 

例えば、私たちがよく目にする土鍋の象徴的なデザイン「花三島」を製作している銀峰陶器(ぎんぽうとうき)さんは、四日市にある萬古焼の窯元だ。

 

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なぜ土鍋に強みがあるのか?

 

それは現在の四日市萬古が「耐熱性の高い成分を有する土」を使用しているからであり、その成分とは「ペタライト」のことである。

 

ペタライトとはLiAlSi4O10の化学組成で表される鉱物のこと。銀峰陶器さんではジンバブエの鉱山から仕入れているとのことだ。

 

 

私は仕事で機能性有機化合物の材料開発や探索をしていたことがあるため、これはとても興味深い。

想像するしかないことだが、彼らは「耐熱性の高い陶器」を目指して、世界中の土を集めては陶器を製作する、トライ&エラーを繰り返したのだろうか?

 

トーマス・エジソン白熱電球のフィラメントの材料として京都の竹に適性があることを見出した話と似ていると思った。

 

萬古焼の先人にしろエジソンにしろ、途方もない作業に思えるのだが、彼らは

「どこかに最高の材料があるはず!」とか「いつか必ず見つかるはず!」

という強い確信を持って取り組んでいたのだろうか?

 

例えば化学会社や製薬会社の材料スクリーニングのように、対象が有機材料ならば有機合成すれば良いが、彼らの場合は「世の中にあるもの」という縛りの中で世界中の土をスクリーニングしていたはずだから、必ずしも解があるわけではなかったはずだ。

 

 

何はともあれペタライトを見出し、それを使用することで土鍋界のデファクトスタンダード(=萬古焼)を築きあげた先人たちは凄いと思った。

 

 

<急須>

萬古焼でもう一つ有名なのが急須だ。

特徴は、光沢があって表面が滑らかでやや紫がかった茶色をしており、このような急須を「紫泥急須」(しでいきゅうす)と言う。

 

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これは萬古焼が還元焼成という焼き方を採用していることが理由の一つのようだ。

これにより、茶の渋み成分であるタンニンが紫泥急須表面の鉄と吸着しやすくなり、結果的に渋みが抑制された(→甘みを感じる)お茶になるということだ。

 

 

2016年のG7伊勢志摩サミットにおいて、萬古焼は乾杯時の器として使われた。

世界に誇る四日市の工芸品だ。

 

開祖である沼波弄山亡き後、幾度となく存続の危機に見舞われながらも生き永らえてきた萬古焼は、まさに「萬古不易」を体現している。

 

これから先、千年、万年続いていく。本当にそんな存在なのかもしれない。

 

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萬古焼 Banko-yaki

Ep.24

萬古焼 Banko-yaki, it is famous for 土鍋 earthen pot and 急須 teapot.

 

After Pacific War, craftsmen proceeded with research and development for improvement of “heat durability” and discovered petalite (LiAlSi4O10) was key material for it.

In result, they completed new earthen pot which characterized high heat durability.

Nowadays banko-yaki keeps over 80% of the market share.

 

Teapot is also famous.

How to burn is induced uniqueness 紫泥急須 Purple clay teapot.

Brilliant, smooth surface and purple color.

 

It is revealed that tannin which is one of the “tea astringency” elements adsorb onto the surface of Purple clay teapot.

So that we can enjoy drinking “sweeter tea” if we use Purple clay teapot, banko-yaki.

 

In 2016, G7 Ise-Shima summit was held.

Banko-yaki was used as the cup of cheers liquor in dinner party.

 

It’s not only traditional craft, but also be proud for Yokkaichi nowadays.

 

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