みんなの笑顔が三重(みえ)てくる Jima-t’s diary

「地域性」に光をあて、「違い」を学び、リスペクトし、楽しむというスタンスで四日市や三重の魅力を伝えていきます

四日市市総合体育館 「体操ドリームチーム四日市エキシビション」

Ep.86

四日市市日永(ひなが)の中央緑地公園内にある「四日市市総合体育館」は悲運の施設だ。

 

2021年9月の「三重とこわか国体」のメイン会場になるために整備されたのに、コロナにより大会自体が中止に。

それ以前の21年7月には東京オリンピックのカナダ代表女子体操チームの事前キャンプが行われたのに、大々的なセレモニーや市民との交流は叶わず。

そもそも実は利用が始まったのは2020年の5月まで遡るのに、常にコロナの影響でこれまで日の目を見てこなかったのだ。

 

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四日市市総合体育館

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幻に終わった「三重とこわか国体」 2021年5月時点

 

しかしついに、この施設が主役になる時がやってきた。

2022年1月16日

半年前に行われた東京オリンピックの体操男子個人総合で金メダルに輝いた橋本大輝選手をはじめ、男子団体総合銀メダルメンバー(橋本・萱和磨・北園丈琉・谷川航)と女子体操、男女トランポリンの東京オリンピック代表メンバー12人で構成される「ドリームチーム」がイベントを行うというのだ。

 

四日市市総合体育館の開館記念「体操ドリームチーム四日市エキシビション」である。

 

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2020東京オリンピック体操男子団体メンバー  NHK HPより

 

21年の11月、市内在住者を対象に観覧希望者を募集すると発表がなされた。

市の広報でめざとくこのニュースを知った私は、さっそく抽選に申し込んだ。

 

するとほどなくして、観覧案内の封筒が自宅に届いた。

これは年始からついているな

と思ったらなんてことはない。応募した1,400人全員が抽選なしで観覧できることになったのだという。

 

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ところで私は以前に一度、体操競技の大会を会場で観戦したことがあった。たしか2012年頃だったと思う。

それは当時、私が友人たちと進めていた「スポーツを生観戦しよう企画」だった。

プロ野球Jリーグの試合はたまに観に行くものの、それ以外のスポーツとなるとなかなか足を運ぶ機会がないというもの。東京に住んでいたメリットを活かしてさまざまなスポーツを観に行ったが、2012年(頃)に観たのが体操競技だった。5月に行われる国内最高の大会、全日本選手権の男子個人総合である。

 

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2012年の内村航平選手 朝日新聞デジタルより

 

時、まさに王者・内村航平の時代。

その大会も当然のように内村選手が優勝した。

 

ただ私は観客として、少し苦い思い出があった。

もちろん内村選手に注目して観ていたものの、

「今から内村選手が試技を行います」と場内アナウンスが流れるわけでも、

「この技は高難度だよ」と誰かが解説をしてくれるわけでもない。

 

例えば鉄棒を観ていても

「あれ、今のコールマンかな?」

と思うのでいっぱいいっぱいだった。

 

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鉄棒をする内村選手 毎日新聞 HPより

 

やはり先ほど述べたことを少し訂正すると、私でもコールマンとかトカチェフとかカッシーナとかは聞いたことや見たことはあるから何となく理解できる。

鉄棒の離れ技というのは見栄えが良いし、映像でも良く使われるからだ。フィギュアスケートのジャンプのように。

 

けれどつり輪やあん馬になってくるとダメだ。

今どのような技が繰り出されていてそれはどれくらいの難易度でどれくらい高得点をもらえるのか?

というのが全然わからないからだ。

 

加えて個人総合特有の「観戦技術」も必要とされた。

個人総合は6人の選手が1組になり、各組が各種目をローテーションするというものだ。

つまり会場全体で同時多発的に試技が行われている。

 

観戦者として、球技のように「ボールの行方を目で追っていれば基本的にOK」というものではない。

全体を俯瞰するのは△で、特定の選手・特定の種目に注目して観るのが理にかなっていると思う。

この点、陸上競技の大会に似ているかもしれない。

 

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そのような経験があったから、今回のエキシビジョンを楽しみにしていた。当日の具体的な内容は明かされていなかったが、トークを交えながら平易な言葉で技の解説などしてくれるのだろうと思われたからだ。

 

いよいよイベントが始まった。体操ドリームチームの登場の前に、地元の「社交ダンス」と「競技バトン(バトントワリング)」の選手たちが前座でパフォーマンスを披露し始めた。

 

最初、なぜ体操の前に社交ダンスとバトンの選手たちが出てくるのか?

と思ったが、彼らのパフォーマンスを観ていて納得した。似ているのだ。体操に。

 

「己の全身を使ってアクロバチックに、ときに道具や設備も使って何かを表現する、それが採点される」

という点でこれらは共通している。

そう考えると親戚のようなものじゃないか。

 

体操競技にとって、新体操は「妹」。トランポリンは「従兄弟」。競技バトンは「姪」。社交ダンスは、「叔父・叔母」といったところだろうか?

(私のステレオタイプが露呈するのでこの辺にしておく)

 

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彼らのパフォーマンスが観客を充分に温めた後、ついに12人のオリンピアンが入場してきた。

東京オリンピック後にこのように豪華なメンバーが一堂に会するイベントは今回が初」(主催者評)とのことだ。

2020東京オリンピックのメダリストこそ体操男子メンバー4人のみだが、競技歴を見ると全員が世界選手権・アジア大会ユニバーシアードユースオリンピックのいずれかの大会の優勝経験がある。現在の日本体操界における正真正銘のトップ選手たちだ。

 

この後、選手たちは一人ずつ順次登場して、どれか一つの種目(床・あん馬・平行棒・平均台・トランポリン・鉄棒)を披露し、観客を沸かせていた。

マイクを握って技を解説してくれる3名は、体操男女とトランポリンの現在の日本代表の監督たちだ。

 

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あん馬を披露する萱和磨選手 中日新聞より

 

エキシビジョンでケガをするのは話にならないので選手たちは技の難度を落としていた。

そんな中、異彩を放ったのがラストに登場したトランポリンの森ひかる選手と太村成見選手だった。

2人は21年11月に行われたトランポリン世界選手権の女子・シンクロナイズドで銀メダルを獲得したペアなのだ。

 

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太村選手(左)と森選手 日本体操協会トランポリン HPより

 

解説者(代表監督)から「先の世界選手権で銀メダルを獲得したときの演技構成を披露する」とのこと。

 

演技が始まる。最初、数回の準備ジャンプを繰り返して互いの着地のタイミング・到達点の高さ、を同調させる。完全に揃ったところで森選手が掛け声で合図して技が始まる。

 

何回目かの回転技のとき、太村選手がバランスを崩してしまい身体から落下して失敗してしまった。極めて難度が高い技であることが想像できる。

 

客席からはため息も。するとなんと太村選手が「もう1回やらせてください」のポーズ。

そんな太村選手の(適切な表現が見つからないが)「男気」に、客席からどよめきが起こる。

実は太村選手は四日市在住で、地元の体操クラブ(三重県内の数カ所で体操教室を開いている相好体操クラブ)でコーチとして子どもたちに指導もしているのだ。

地元で、市民に、何よりも教え子たちに自分の持てる力の全てを見てもらいたい、という気持ちが伝わってくる。

 

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(参考)トランポリン 日本体操協会トランポリン HPより

 

それにしても究極の「鉛直方向限定反復競技」とも言えるトランポリンは見応えがある。ビルの3階に相当する8mの高さまで飛び上がるのだ。空中での連続回転やひねり技もアクロバチックだ。

 

2人で行う種目「シンクロナイズド」は初めて観た。これは2人の着地のタイミングがわずかでもズレると大変目立ってしまう。かといって高さ(最高到達点)がズレていても目立つ。しかも着地とジャンプは何度も繰り返される。だから破滅的なズレにつながる前に常時微修正するしかない。空中でクルクルしながら。横目(いや身体が回転しているので「横」ではないけど..)でパートナーを確認して同調させなければならないのだ。

きっと、飛び込みのシンクロやアーティスティックスイミングよりもこちらの方が難しいのではないか。

 

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(参考)トランポリン・シンクロナイズド 日本体操協会トランポリン HPより

 

森・太村ペアの2回目の演技が始まった。

うまくいってくれ、と心の中で願う観客たち。

先ほど失敗した最後の大技「X回転Y回ひねり」(←もはや分からない)が見事に成功した!

 

観客が沸く。解説者(代表監督)も褒める。充実の笑顔をみせる森選手。万感の思いで観客に手を振る太村選手。

 

2人にこの日一番の拍手が送られたのは言うまでもない。

 

 

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The Yokkaichi gymnasium  “Yokkaichi exhibition by gymnastics dream team”

Ep.86

The Yokkaichi gymnasium has located in the city central green park since 2020.

Even though built for “the national sports festival in 2021”, it was banned due to corona virus pandemic.  It must be “tragic facility”.

 

But at last, the official opening event was held in Jan. 2022.  National gymnastics and trampoline members of 2020 Tokyo Olympic came there and showed exhibition!

Audience who were selected in citizens enjoyed Olympian’s performances.

 

yokkaichi-so-tai.jp

www.sohgoh.info