みんなの笑顔が三重(みえ)てくる Jima-t’s diary

「地域性」に光をあて、「違い」を学び、リスペクトし、楽しむというスタンスで四日市や三重の魅力を伝えていきます

伊勢擬革紙

Ep.152

先日、鈴鹿イオンモールRight-onの店内を歩いていたら「ランチコート」が柱の上にディスプレイされていた。

モコモコで暖かそうな裏地のボア、それとは対照的にゴツい表側の皮。重厚なヴィジュアル。

それは販売品でもあり、値札を見ると17万円、Made in USAとあった。

 

これは「本物のランチコート」だな、と思った。

 

イメージ OTOKOMAE HPより

 

ランチコート(Ranch Coats)とは「皮がついたままの羊の毛」を利用したコートのこと。アメリカの牧場で防寒用の作業着とされたことが発祥とされる。

 

イメージ The Sheepherder HPより

 

私は大学生の頃、このランチコートに憧れ、好んで着ていたことがあった。

それはあるマンガのキャラクターが着ていたのがカッコよく、自分も同じものを着てみたいと思ったからだ。

 

少年ジャンプ HP より

 

言わずと知れた「ろくでなしブルース」。

週刊少年ジャンプ「黄金の週600万部時代」を彩ったドラゴンボールスラムダンク幽々白書ダイの大冒険..

その一角を占めた大人気マンガである。

 

吉祥寺・帝拳高校の主人公・前田太尊(たいそん)の、喧嘩に明け暮れる日々、そしてボクシングと出会い、やがて情熱を注ぎ世界チャンピオンを目指す姿が描かれる、不良&青春マンガだ。

 

私は小学生だった頃、黄金時代のジャンプを親に買ってもらっていたが、ドラゴンボールやスラダンをはじめ数作品しか読んでおらず、実はこの「ろくブル」は読んでいなかった。(ただ母は「買ったのにもったいないから」ということで「ろくブル」を含めほぼすべての作品を読んでいたようだ)

 

そんな私は大学生になって、なんとなく「ろくブル」に関心が湧き、文庫版25巻を大人買いして読んだらハマってしまったのだった。

 

そして私が作中、最も好きになったキャラクターが「渋谷の鬼塚」だった。

 

渋谷の鬼塚 ネット上の画像より

 

渋谷の鬼塚とは、

吉祥寺の前田(主人公)

浅草の薬師寺

池袋の葛西

と並ぶ東京の不良「四天王」の一人であり、渋谷の番長をしている見た目通りのワルだ。

 

ただし理知的な面も併せ持ち、大阪最強の不良・川島とその仲間たちが修学旅行で東京を訪れた際、「四天王」との間で勃発する乱闘においてそれを発揮する、そんなキャラクターである。

 

その鬼塚が愛用し、彼の「象徴」とも言えるアイテムがランチコートなのだった。

 

左から鬼塚、薬師寺、前田、葛西 SNSエンターテイメント HPより

 

私は鬼塚が着ているようなランチコートがどうしても欲しくなった。

そこで、当時小金井に住んでいた私は吉祥寺に向かったのだった。(それこそ渋谷で買えよ、と言われそうだが遠いので行くのがだるかった。前田の本拠地ということもあるし吉祥寺で買う「意味」は持つだろうと思った)

 

確か吉祥寺のマルイで買ったと思う。裏がボアになっている焦げ茶色のランチコート。鬼塚の着ているものに色が似ていて満足だった。値段は1万円くらいだったと思う。

 

対応してくれた男性店員さんに

「渋谷の鬼塚に憧れてランチコートを買いに来ました」

と言ったら、

私よりも10歳くらい年上だった(ように見えた)その人は、

「懐かしいっすね、ろくブル! スクリューフ〜ック!」

と言って、主人公・前田太尊の得意技の一つを実演までして見せてくれた。

 

 

だからこのとき買ったランチコートは、私の人生で購入した服の中で最も印象的なものの一つだ。

その数ヶ月後、私は初めて観光で海外を訪れることになったが、その際もランチコートを着て行った。2008年の1月の話だ。

真冬の香港でそれは快適だった、かどうかまでは憶えていないが、とにかく当時、ランチコートは私のお気に入りだった。

 

このときのランチコート、今はどこにあるのだろう?

売った記憶も捨てた記憶もないから、実家の押し入れのどこかに眠っているだろう。

 

擬革紙の会 HPより

 

ところで当時私が購入したランチコートはもちろん「本物」ではない。

表地は「フェイクレザー」であり、裏地のボアは、憶えていないがこれも羊毛ではなかったはず。何しろ1万円で買えたのだから。

 

「本革」であるかのような見せるのは合成皮革であり、樹脂でできている。現代に創り出された技術だ。

ところでこの本革のimitation(模造)の技術というのは昔の日本にも、江戸時代にもあったようだ。

 

擬革紙(ぎかくし)である。

革に擬(なぞら)えた紙のことで、350年前に生まれた。

1684年、伊勢国の池部清兵衛が油紙を改良して擬革紙の製造を開始。煙草入れに加工して売り出したところ、伊勢参りのお土産として大流行したのだという。

 

擬革紙の会 HPより

 

一度は途絶えたこの技術を現代に工芸品の「伊勢擬革紙」として復活させたのが参宮ブランド「擬革紙」の会だ。 

彼らは財布や朱印帳カバーなど身の回りのアイテムを擬革紙で製作し、販売している。

擬革紙は玉城町明和町の「三重県指定伝統工芸品」にもなった。

 

 

私も伊勢擬革紙でできたメガネケースを手に入れてみた。

丈夫で品がある。水に濡れても大丈夫だ。手触りはまだしも、見た目は本当に革に擬えてある。

何よりも圧倒的に軽い。さすが紙だけあって冗談みたいな軽さだ。

 

以来、私はこのメガネケースを愛用している。

 

 

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伊勢擬革紙 Ise Gikakushi (Ise Imitation leather paper)

Ep.152

Imitation leather is a method to supply durability and elegance like "true leather" as lower price in apparel industry.

The most of it was made of resin like urethane, but in Mie, there has been "Imitation leather paper" since Edo period.

Paper is able to substitute leather, isn’t it?!

 

Tabaco case made of this paper was popular and became a souvenir for visitors to Ise-shrine at that time.

In present day, a citizen group revived this imitation leather paper as a traditional craft "伊勢疑革紙 Ise-gikakushi".

They prepare various daily products like glass case and tell us this authentic technic.   

 

gikakushi.jp

www.pref.mie.lg.jp