みんなの笑顔が三重(みえ)てくる Jima-t’s diary

「地域性」に光をあて、「違い」を学び、リスペクトし、楽しむというスタンスで四日市や三重の魅力を伝えていきます

霞ヶ浦野球場 プロ野球二軍戦編

Ep.151

日本代表の優勝で幕を閉じた第5回WBC (World Baseball Classic)。

遡る1次ラウンドの日本の初戦、TV中継を観ながらプレイボールを待っていたとき、

そういえば2006年の第1回WBCの韓国戦を東京ドームで観戦したことがあったっけ

と電撃的に思い出した。

 

私はスポーツに関する記憶力には抜群の自信を持っているが、これは忘れていたのだった。

 

第1回WBC Baseball King HPより

 

私の世代は、子ども時代から大人に至る成長過程で、“プロ野球のトップ選手たちが野球の国際大会に出場し始めた時代”と重なる。

 

子どものとき、「なんで野球にはプロのスター選手たちが出る国際大会がないのだろう?」

と思っていたものだった。

サッカーがW杯出場に向けて奮闘していた(Ep.118参照)だけに。

 

当時小学生の私は、祖父を相手に庭で二人で野球の試合をしていたのだが、私の自作・自プレイチームは、スター選手たちで構成された「野球日本代表」だった。

 

それは何かと言うと、(私は広島カープファンなので)野村、緒方、前田、江藤、金本、佐々岡といった選手たちにイチロー、清原、松井秀喜、野茂、佐々木、斎藤雅樹などが加わったチームである。

要するに「私が考える最強日本代表チーム」であった。1996年とか97年の話である。

(90年代の赤ヘル打線は最強なので、打線に関しては他チームから少し選手を加えるだけで良かった)

 

イチローの打ち方も、野茂の投げ方も、真似したものだった。

 

Number Web より

Full-Count HPより

 

子どもの私でなくても、野球ファンなら誰もが一度は夢想したことがある「正真正銘の野球日本代表」。

私が中学三年生だった2000年のシドニー五輪がその嚆矢だった(正確にはそのアジア予選だが)。

パリーグ6球団を中心に松坂大輔中村紀洋黒木知宏松中信彦田口壮といったトップ選手が選出されたのだ。

 

しかし「正真正銘の野球日本代表」を望む身からすれば大きな不満があったことに疑いはない。

前述の彼らを除くと、あとはほぼアマチュア選手だったからだ。

 

2000年シドニー五輪・野球日本代表 Olympics HPより

 

彼らの試合は、アジア予選も五輪本戦もTV中継されたので私もよく観ていた。(オーストラリアなので時差の問題はなかった)

松坂が、黒木が、日の丸を背負って「日本代表」として投げている。

その光景はやはり興奮するものがあったが、しかし彼らが残した「結果」は衝撃を与えた。

 

アメリカ、キューバ、韓国に勝利できず、4位に終わったのだ。

プロ野球のトップ選手を派遣したのにメダルにも届かない

 

マスコミのみならずファンも大いに驚いた。何しろ、1984年のロサンゼルス五輪(公開競技)以来、常に獲得してきたメダルを逃したのだから。

4年前のアトランタ五輪では、アマチュア野球界最強の代名詞・キューバ代表からプロ選手抜きで大金星を挙げていたのに。(サッカー男子の“マイアミの奇跡”と比べてなんて知名度の低いことか。みんな忘れている。やはりキャッチコピーは偉大である)

 

3位決定戦で敗北後、TVカメラの前で悔し涙を流した中村紀洋選手の姿ほど印象的なものはなく、更なる驚きを私に与えた。

ただ今振り返ると、このときの中村ノリの涙が「正真正銘の野球日本代表」が誕生する「産声」となったように思える。

(2023シーズン現在、中村紀洋氏は中日の二軍打撃コーチ)

 

中村紀洋選手(右) 朝日新聞デジタルより

 

2004年のアテネ五輪では、松坂大輔上原浩治黒田博樹など錚々たるメンバーのオールプロ選手で編成して銅メダルを獲った。

 

しかしオリンピックの野球競技で残念に思うことは、ドミニカ共和国ベネズエラプエルトリコパナマといった中南米の野球強豪国が全く見当たらないことだ。

日本プロ野球界の外国人スラッガーで実はアメリカ人選手が少ないことくらい、プロ野球選手名鑑を見れば小学生でも容易に気付く。

 

大好きだったL.ロペス選手 96、97年の打点王。驚異的に打点を稼ぎ、私の中では今でも「カープ史上最強の外国人バッター」 ラブすぽ HPより

 

90年代の日本のプロ野球界は、どのチームにも中軸に強力な外国人バッターがおり、彼らが本塁打や打点を量産して個人タイトルを獲得していた。

出場登録できる外国人選手の人数に限りがあるのは、そうでもしないと全員が外国人選手になってしまうからだ。

そもそも彼らを「助っ人」と呼んでいる時点で、

自分たち(=日本人選手)よりも外国人選手の方が実力が上

とみなしている証左じゃないか。

 

加えて言うと、日本のプロ野球で活躍する外国人選手というのは、

本当はメジャーリーグで活躍したいけど実力的に無理だった人たち」じゃないか。

 

以上のように、純然たる事実をもとにどう合理的に考えても、「日本・日本人選手が野球で世界一」である訳がない、というのが小学生のときから私が思っていたことだった。

だから「五輪でメダルを獲得(=世界で3番以内)したって、それは実態を反映していないじゃないか」と。

 

 

そんな、子どもの私でなくても思うことを、世界の他の人たちも思っていたことだろう。

「結局、野球でどの国が一番強いの?」と。

アメリカだと思うのが普通だけど、そうじゃないかもしれないし、仮にそうだとして、じゃあ二番目に強い国はどこなの?」と。

 

中南米の国々と、メジャーリーガーが出場し、「正真正銘の野球世界一を決める国際大会」がスタートする時代が迫っていた。

WBC (World Baseball Classic)の創設である。

 

Number Web より

 

そのような訳だから、2006年の第1回大会が始まったとき、

「とうとうホンモノの大会が始まりやがった」

と思ったものだった。私は20歳になっていた。

 

大会前、日本中を歓喜させたのはイチロー選手が出場を表明したことだった。

2004年のアテネ五輪日本代表メンバーは確かにすごかったけれど、それでも「日本プロ野球史上最高の打者」にして日本人メジャーリーガーの“象徴”であるイチローがチームにいるか、いないかというのは、全く次元が異なる話だった。

松井秀喜選手は参加しなかったものの、それでもイチローが出場する時点で、日本代表は“ザ・ベスト”と言えるものだった。

 

朝日新聞デジタルより

 

冒頭の韓国戦の話に戻ろう。

私が大学の友人2人と東京ドームでいっしょに観たのは、第1ラウンドの韓国戦で、今調べると2006年3月5日とある。

当日券を購入し、やや三塁側のキャッチャーの後方遥か上階だった。グラウンドまで遠く離れていて選手は小さくしか見えなかったが、それでもチケット代は¥8,000くらいしたと思う。

 

私たちの後ろの席には少年野球のコーチが野球少年数人を連れて観戦に訪れていて、子どもたちにプレーを解説していた。

「味方が点を獲ってくれた次の回は、投手は絶対に点を獲られてはいけないよ」

とか、

「サードゴロだけど悪送球に備えてキャッチャーが一塁手のカバーに走っているよ」

とか、

「ほら見てごらん。あそこにピンクの服を着た人たちが見えるでしょ。あれは林家ペー・パー子だよ」

とか言っていた。

(確かに、私たちのはるか左前方に林家ペー・パー子いるのが確認できた)

 

読売新聞オンラインより

 

対戦相手の韓国は、これまで五輪で散々負けてきた相手だった。

けれどそれは「イチローがいないチーム」での話。

 

イチローがいる「正真正銘の野球日本代表」ならば、日本はアジアで最強。少なくとも韓国には負けるはずがない。というのが世間の見方だった。

それは今思えば、先入観や“おごり”そのものなのだが、当時はそのような認識だった。

 

9回の攻撃を残して日本は1点ビハインド。2死からバッターはイチロー

「え? ほんとにこのまま負けるの? まさかね?」

が、想いも虚しく、高々と上がったキャチャーフライでゲームセット。

「ま、負けやがった..」

 

私は衝撃を受けたがそれは他の観客も同様だった。

イチローがいても韓国には勝てないんだ..

日本と韓国、「トップ選手」たちの「地力」で比較するならば、両国に差なんてなかったのだ。

 

 

話を2023年の三重県に持っていこう。

私の職場の地元出身者たちで考えると野球熱はそう高くないように見えるが、プロ野球だと中日ドラゴンズファンであることが多い。

 

2023年、立浪監督が就任して2年目のシーズンが開幕した。

今、ここに中日ファン(竜党)を歓喜させた事実がある。

 

WBC日本代表「侍ジャパン2023」の全成績

<練習試合・強化試合>

vs 福岡ソフトバンクホークス:8ー4 ○

vs 福岡ソフトバンクホークス:4ー2 ○

vs 中日ドラゴンズ:2ー7 ●

vs 中日ドラゴンズ:4ー1 ○

vs 阪神タイガース:8ー1 ○

vs オリックスバッファローズ:9ー1 ○

 

WBC本戦>

vs 中国:8ー1 ○

vs 韓国:13ー4 ○

vs チェコ:10ー2 ○

vs オーストラリア:7ー1 ○

vs イタリア:9ー3 ○

vs  メキシコ:6ー5 ○

vs アメリカ:3ー2 ○

 

通算成績;12勝1敗

 

そう。大谷翔平ダルビッシュ有を擁し、第5回WBCを大会史上初めて全勝優勝した「侍ジャパン2023」。

そんな「WBC史上最強チーム」とも呼べる彼らが、唯一敗れた相手が中日ドラゴンズだったのだ!?

 

落合博満監督退任後、セリーグNo.1の弱小球団に成り下がった中日ドラゴンズ

今シーズンこそは、と期待を抱く竜党は歓喜したのだった。

(が、そんな中日は5/18時点でセリーグで断トツの最下位である)

 

 

4月上旬。プロ野球2023シーズンが開幕して一週間。

四日市で中日と福岡ソフトバンクの二軍戦(ウエスタンリーグ)が開催された。

スタジアムの「霞ヶ浦第一野球場」は、競輪場(Ep.97参照)の隣にある。

 

私はこれまで、色々な野球場で何度もプロ野球の試合を観戦してきたが、二軍戦と地方球場は初めて。

家族とともにピクニック気分で訪れたのだった。

 

 

プレイボール前の花束贈呈のときまで知らなかったが、中日は片岡篤史監督、ソフトバンク小久保裕紀監督だった。

日本のプロ野球の場合、元・名選手が指導実績もなくいきなり一軍の監督に就任、ということがざらであるが、近年のトレンドは二軍監督を経由するようだ(オリックスの中嶋監督、ヤクルトの高津監督もそう)。

 

二軍監督を経験することで、選手の特性、人間的な部分も含めてより理解が深まり、自身のコーチングにいかされるのだろう。

 

特に小久保監督は日本代表の監督(2017年第4回WBC時の監督)でもあった。

近い将来、間違いなく一軍監督になるはずだが、その前に二軍を経験させるという方針。さすが育成と結果を両立しているホークスは違う。

 

 

プレイボール!

ソフトバンクの先発は一軍での実績十分だが一軍の開幕ローテに入れなかった武田翔太

二軍戦である今回は私でも知っている選手が出るだろうか? と思っていた。そんな中での武田。地方の、四日市の野球ファンにとっては嬉しい。頑張れ武田! というところだが、序盤から失点を重ねる。

 

石川昴弥選手 中日新聞 HPより

 

中日は将来の4番候補・石川昴弥選手(2019年ドラフト1位)、ソフトバンクは未完の大砲・リチャード選手(2022年シーズンの二軍の本塁打打点王)を含め、両チーム、4回までに計4本のホームランを放つ。

 

両翼が97mと表記されている。狭いので、冗談みたいにしょっちゅうホームランが出る。

これは地方球場(二軍戦)あるあるなのかもしれない。

 

 

私たちは家で作ってきたお弁当を食べながら外野席(シート無しの芝生)の最後方で観ていたが、目の前をグローブをはめた野球少年たちが行ったり来たりしていた。彼らはホームランボールをゲットしようと試みているのだ。

 

「次は左(打者)やでー!」

と少年の一人が声を掛ければ、ドタドタとライトスタンド側へ移動する。

右打者ならばレフトスタンドへ。大移動の様相を呈している。

 

中日新聞 HPより

 

外野席自体も、最前列(フェンス)から最後方(球場外)まで5mくらいしかない。

したがってホームランは結構な確率で場外へと消える。(ちなみに場外へ消えたホームランボールも少年たちは追いかける)

 

これに関してより興味深いのはレフト側だ。

レフトスタンドの最後方からさらに20mほど後方は、もはや海が広がる。伊勢湾だ。

するとレフトへの場外ホームランというのは、伊勢湾へと消えていくことだろう。

 

私は、サンフランシスコ・ジャイアンツの本拠地にて、バリー・ボンズ選手が放つ「スプラッシュホームラン」を思い出していた。

あいにく伊勢湾にはボートに乗ってそれを待つ人たちは見当たらなかったが。

 

正しくは「スプラッシュヒット」と呼ぶらしい Yahooの記事より

 

試合は14―6でソフトバンクが快勝。

4,688人の観客は中日ファンの方が多かったと思うが、それでも地方(四日市)でプロ野球の(二軍であっても)試合が観れるということに、多くの人は満足したことだろう。

 

観客数4,688人というのはすごい人数である。

例えば私は三重ホンダヒートラグビー男子2部)鈴鹿ポイントゲッターズ(サッカー男子JFLヴィアティン三重(バレーボール男子2部)三重バイオレットアイリスハンドボール女子1部)を観戦してきた(Ep.14513011892など参照)が、彼らはこんなにも集客できない。

 

この国で野球の人気というのは絶大だ。

私はスポーツが、野球やサッカーといった競技が一人勝ちするのではなく、やるのも観るのも、より多様化すればいいのに、マイナー競技がマイナーでなくなれば良いのにと願っている一人だ。

他の競技がファン開拓の営業努力と地域性を全面に押し出しても到達できないところにプロ野球の二軍がいる。

そんな状況にもどかしさと若干の失望を感じつつ、四日市でのプロ野球二軍戦観戦を終えたのだった。

 

 

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Kasumigaura Baseball park in Yokkaichi The match of “Second team” of Japan Professional baseball

Ep.151

In 霞ヶ浦第一野球場 Kasumigaura Daiichi Baseball stadium, it was a rare case to hold the game of professional baseball western league(second team's competition), Chunichi Dragons vs Fukuoka Softbank Hawks on April. 

 

The large number of people in Yokkaichi or Mie prefecture are fan for Dragons because of nearby Nagoya.

But it seemed that general baseball fan also visited this stadium.

 

It was so curious regarding to tiny stadium, so that we could see much homerun!

4,688 audience enjoyed their performance and this event.

 

baseball.sports.smt.docomo.ne.jp

www.chunichi.co.jp

www.y-sports.jp

news.yahoo.co.jp