Ep.80
京都や奈良といった古都の近場に位置する三重県(伊勢国)にはいくつかの「古代遺跡」がある。
1. 伊勢国分寺跡
市内で発掘された縄文時代の土器や石器が展示されている鈴鹿市考古博物館。その隣にあるのが「伊勢国分寺跡」だ。
聖武天皇によって各国に建てられた国分寺は伊勢国では鈴鹿に置かれていたようだ。「畿内と東日本を結ぶ交通の要衝であった鈴鹿は、古代伊勢国における政治文化の中心だった」らしい。
博物館の3Fの展望デッキから伊勢国分寺跡を見渡せた。
なんと広々としているのだろう。その昔、この場所でたくさんの役人たちが仕事をし、暮らしていたのだ。
転じて今、この古代遺跡の歴史公園には幼い子とそのお父さんの2人が遊んでいただけだった。休日だというのに。
もしここが東京なら、わんさか人がいて家族連れが走り回ったりキャッチボールをしたりフリスビーをしたりしていることだろう。
2. 久留倍官衙遺跡(くるべかんがいせき)
四日市市の大矢知町(おおやちちょう)にある「久留倍官衙遺跡(くるべかんがいせき)」は国道1号線バイパス建設のための事前調査で確認された古代の役所の遺跡だ。
「くるべ歴史公園」として整備され、2020年11月にオープンした四日市の新しい名所だ。
遺跡は大きく3つの時期に分かれ、最も古い建物群は7世紀後半〜8世紀前半のものとのこと。
この役所が当時、どのような機能を持つものだったのかについては調査中のようだが、壬申の乱(672年)や聖武天皇の東国行幸(740年)と関連する可能性があるらしい。
3. 斎宮跡
伊勢市の北部、明和町(めいわちょう)にある斎宮歴史博物館と斎宮跡。
「斎宮(さいくう・いつきのみや)」とは「斎王(さいおう)」が住んだ宮殿のことで、斎王とは「天皇家の守護神を祀る姫」のこと。
天皇家の守護神とは天照大神(アマテラスオオミカミ)のことなので、伊勢神宮の手前に置かれた。
前述の通り斎王とは女性である。天皇の娘や皇族の女性のうち独身の者から選ばれたようで、斎王に選ばれると、最初の数年は世俗や都から切り離された生活(事前修行)をした後、満を辞して伊勢に向かった。そして待ち受けていたのは「行事」の数々だ。
飛鳥時代(7世紀後半)から南北朝時代(14世紀)まで続いたこの制度で選ばれた女性はまったくたまったもんじゃないと思うが、中には恋愛(密通)を楽しんだ斎王もいたようだ。
それが描かれているのが平安時代の和歌集『伊勢物語』で、在原業平(とされる男)と密通するのが恬子内親王(やすこないしんのう)と思われる人物だ。
在りし日の姿に思いを馳せる、そんな古代遺跡群だ。
----------------------------------------
The ancient ruins at Mie
Ep.80
Mie has several ancient ruins. They are related to Nara, Kyoto, such ancient cities.
We can imagine the era when people lived there.