みんなの笑顔が三重(みえ)てくる Jima-t’s diary

「地域性」に光をあて、「違い」を学び、リスペクトし、楽しむというスタンスで四日市や三重の魅力を伝えていきます

ラグビー PEARLS(パールズ)編

Ep.54

四日市を拠点に活動する女子ラグビーチーム「PEARLS(パールズ)」は、今年の2月に行われた「全国女子ラグビーフットボール選手権大会」で優勝し、15人制女子ラグビーで初の日本一に輝いた。

 

私はこの試合をYouTubeライブ配信で観ていた。パールズの(正直に言うと女子ラグビーの)試合を真剣に観るのは初めてだったが、主将のNo.8 齋藤聖奈選手が先制トライを挙げてからというもの、点を獲って獲り続け、41―10で快勝してしまった。

CTB ティマイマ・ラヴィサ選手(フィジー)のランとパスのスキルは対戦相手を翻弄し、WTB ジョージア・ダールズ選手(ニュージーランド)はラインブレイクし続けた。

 

パールズの完勝だった。

勝戦なのになぜこんなにも力の差があるのかと不思議に思ったほどだ。

 

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パールズ HPより

 

悲願の初優勝を成し遂げたパールズへの四日市市長・市役所のリアクションは小さく(所感)、新聞でも大きく取り上げなかった地元メディアに対して、私は失望している。

なんてったって日本一なのだ。

毎週記事が載る男子ラグビーの「Honda HEAT」(鈴鹿市)は、本シーズンのトップリーグ・レッドカンファレンスで1勝しかできず、下から3番目でフィニッシュした弱小チームだというのに。

 

私はパールズの選手を、市内のスポーツジムやスーパーで見かけたことがある。彼女たちは本当にこの街で生活し、トレーニングし、日本一になったのだ。

 

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垂れ幕 近鉄百貨店四日市

 

話は変わり、6月最後の週末に「太陽生命ウィメンズセブンズシリーズ 第4戦・鈴鹿大会」が開催されるということで、私は「三重交通G スポーツの杜鈴鹿」に観戦に訪れた。

 

現在、日本の女子ラグビー界は、冒頭に述べた「全国選手権(15人制)」、今回の「太陽生命セブンズシリーズ(7人制)」と「国体(7人制)」が3大タイトルになっており、今シーズンのパールズは3冠を目標としている。

 

太陽生命シリーズ」は2014年から始まった女子7人制ラグビー(セブンス)の大会で、日本女子ラグビー界のレベルアップに最も寄与してきたと言われる。

 

今シーズンは第1戦・東京大会、第2戦・静岡エコパ大会、第3戦・熊谷大会、に続くシリーズ最終戦鈴鹿であり、鈴鹿大会で年間総合優勝が決まるというものだ。

 

第3戦までを終えた時点で年間総合ポイントで2位につけていたパールズは、地元で大会優勝かつ年間チャンピオンをかけて戦うことになった。

 

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三重交通G スポーツの杜鈴鹿

 

ところで私は7人制ラグビー(セブンス)については明るくなかった。

ルールは理解しているし、男子ではフィジーが最強(後述)という事実は知っていたものの、セオリーやプレーの傾向は把握していなかった。

 

私のそれまでのイメージだが、15人制との違い(男子)について、

「体のサイズはそこまで要求されない」というものがあった。

男子15人制で例えると、PR 稲垣啓太(116kg)のような体重はいらないし、LO ジェームス・ムーア(195cm)のような身長もいらない。

 

それよりも重要なのが「走力」だ。

都合の良い日本語があるから「走力」と表しているが、分解すると、アジリティー・スプリント回数・絶対的なトップスピード・ランニングスキル・スタミナ、といった具合になる。

 

誤解を恐れずに言うと、セブンスでは「サイズはそこそこでとにかく走れる選手」で構成されており、彼らが15人制でもトップ・オブ・トップかと言うとそうではない(ただし例外的にWTBでは究極的に足が速い選手が選ばれる傾向があるので、福岡堅樹やレメキ・ロマノ・ラヴァはリオ五輪代表にも選ばれた)。

サイズの問題で15人制では埋もれている才能が、光り輝く別の舞台がセブンスなのだ。

 

が、とにかく実際に観ないことには分からない。いざ観客席へ。

入場料は無料。私が到着した時点で観客は490人とのことだった。

 

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ちょうど行われていたのは、

東京山九フェニックス vs 日本体育大学

だった。

この日(第1日目)は予選リーグで、全12チームが3グループに分かれて総当たりで戦うので計36試合が行われる。各チームは一日で3試合戦うことになる。前後半7分ハーフと短い代わりに、フィールドの広さは15人制と同様だ。

 

 

何試合か観た後で分かったことは、この競技は「高度な鬼ごっこ」と形容するのがふさわしい。体を動かすレクリエーションとも言える。ミニゲーム感が強い。もちろん、観ていてとても楽しい。

 

また私がそれまで思っていたよりも、フィジカルは必要とされず、一にも二にも走力、といった感じだ。

実際に観た上での15人制とのプレースタイルの違いについて、この競技ではボールを持った選手が横に流れたり斜め前方に走ったりする。15人制では基本的にボールを持った選手はトップスピードで真っすぐ走って相手にぶち当たる、つまりゴールまで最短距離を行く、というのがセオリーとされる。

セブンスではプレーヤーの人数が少ないため広大なスペースがある。なのでそのエリアを見出して、相手に捕まることなく、仲間と工夫しながらゴールを目指す、というプレーを志向しているものと思われる。

 

観客のみなさんを見ると、各地からこの鈴鹿に応援に来ていることが分かる。東京、徳島、長門市山口県)、熊谷、札幌、横浜、大阪などから来ているのだろう。地元のパールズのファンを除くと選手たちのご両親たちが多いのではないかと思う。

 

パールズは1試合目の「北海道バーバリアンズ ディアナ」戦と2試合目の「YOKOHAMA TKM」戦に快勝して、この日最後の試合、「追手門学院大学」戦を迎えた。

パールズのファンは結構詰めかけていた。彼らはパールズの出番直前になると客席に来て、終わると一斉にはける、というもので、少年野球や少年サッカーで我が子のチームの試合のときだけ観にくる保護者のようだった。

ただし、みなさんなかなかラグビーを見慣れている。

 

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この試合はパールズが終始僅差でリードするという展開だった。終盤、追加点を狙うアタックで、ラヴィサ選手がこの選手特有の(いや、フィジアン特有の)片手パスを繰り出したがスローフォワードを取られてしまったのと、ゴール前5mのディフェンスでピンチ脱出のターンオーバーと思いきやラインオフサイドを取られる、というパールズにとって厳しいジャッジが2回続いた。

これに対し客席のパールズファンのみなさんは不満の様子。私の近くにいた男の子も「審判、違うんちゃう?」と言っている。

結局、土壇場でトライを許したパールズは負けてしまった(それでもC組1位で翌日の決勝トーナメントへ進んだ)。

 

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試合を終えて観客席にあいさつするパールズの選手たち

 

私自身は全ての試合を真剣に観ていた。

「ながとブルーエンジェルス」「アルカス熊谷」「東京山九フェニックス」の3チームがとりわけ強かった。アタックが洗練されていてプレーの明確な意図を感じられる。選手たちの連携・連動も抜群で明らかに完成度が高い。後で調べると、この3チームはセブンスに特化したクラブチームということだった。であるとすると、この舞台をシーズン最重要の大会、と位置付けている可能性が高い。

 

翌日、(私は観戦できなかったが)決勝トーナメントと順位決定戦が行われた。

パールズは準々決勝で「チャレンジ」チームと対戦。が、平均年齢17歳の「セブンズユースアカデミー」の選手たちが主体だというこのチームに敗北。地元での優勝はならなかった。

 

これを知ったとき、日本チャンピオンが高校選抜に負けてしまうという事実に戸惑った。男子で例えると、桐蔭学園パナソニックワイルドナイツに勝ってしまうようなものじゃないかと。

おそらくセブンスでは、圧倒的に試合時間が短いのと、フィジカルのハンディキャップが大きく低減される傾向にあるため、このような金星は割と起こり得るのだと思われる。

 

勝戦は、

東京山九フェニックス vs ながとブルーエンジェルス

で、東京山九が勝利。第4戦・鈴鹿大会を制した。

これをもって今シーズンの太陽生命シリーズが終了し、年間総合優勝は「ながとブルーエンジェルス」、2位が東京山九、3位がパールズとなった。

 

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パールズ HPより

 

後日談になるが、私は男子の7人制ラグビーについても勉強するためリオ五輪のときのフィジー代表の試合を観てみた。

 

「フィジー7人制ラグビーにおけるウサイン・ボルトだ」

エディー・ジョーンズ氏(現イングランド代表監督)が言ったことは知っていた。

本家ボルトや体操の内村航平や柔道男子100kg超級のテディ・リネールのように、99%金メダルを獲るだろう、と思われ、実際に獲った。男子のこの競技でぶっちぎりの強さを誇るのがフィジーだ。

 

フィジーの選手たちの特徴は、走力とフィジカルを高次元で兼ね備えている、というものだった。

ボールを持った堂々たる体躯の選手が敵陣に突っ込み、形の上では捕まるのだが懐が深いため絡まれることはなく、スタンディング状態でくるっと後ろを向くと、そこに走り込んでくる味方にパスする、というもので、要するにソニー・ビル・ウィリアムス(元オールブラックス)のようなオフロードパスを各選手が続けることで、数的有利の状況を作り出して外の選手で勝負、というパターンだった。(かつ、フィジー選手特有の自由奔放でトリッキーなプレーもセブンスには抜群に相性が良い)

 

彼らのプレースタイルを見て再び考えてしまうのは、セブンスにおけるフィジカルの優位性だった。この競技の選手に求められる特徴が私は再び分からなくなってしまった。

 

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リオ五輪決勝 フィジー vs イギリス

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ワールドラグビー HPより

 

いずれにしても今回の試合観戦で予習できたこともあり、私は東京五輪7人制ラグビーを男女ともにとても楽しみにしている。

 

3冠獲得の目標はついえたが、パールズにとっては、今秋に「三重とこわか国体」を控えている。実はパールズが2016年に発足した理由はこの地元で開催される国体のためなのだ。

そのような経緯からチームの名誉顧問は三重県知事、2人の顧問は四日市市長と鈴鹿市長がつとめている。すると国体で優勝したときこそ、政治家たちが大きくリアクションするのだろうか? それはさておき、とにかく三重国体だ。

 

齋藤聖奈キャプテンはインタビューで言っていた。

「3冠すべてにベストを尽くすが、地元開催の国体が本当に大きなターゲット」

「チームの発足からずっと目指してきた舞台なので、いよいよこのときが来たなという感覚」

と。

彼女たちのシーズンは続くのだった。

 

 

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PEARLS, Women’s rugby football club in Mie

Ep.54

PEARLS is the women’s rugby football club in Yokkaichi, Mie.

Almost players are an amateur.  They live, work and train in this city.

 

Since 2016, they have aimed to be not only a domestic champion, but contributed community.

In 2020-2021 season, they won “the national women’s rugby championship” for the first time.  They achieved their highest goal.

 

This season, 2021-2022 has already started.

PEARLS competed “Taiyo-seimei women’s sevens rugby series” as first official match this season.

In June, 4th round which means the final round of this competition held in Suzuka, their home ground.  So I went to see.

 

Even though only seven players playing and seven minutes halves, it’s almost same rule and field size as 15 players playing rugby.

 

It’s too fun!

This sport is “sophisticated tag”, like a recreation.

 

In my opinion, the most important skill is “Running skills” by individual players.

Second one is “Way of attacking” by all players.  They have to break defense-line with teammate, logically, tactically and creatively.

It seems that physical strength tends to be restricted.

 

PEARLS missed their first title in this season.

Next target will be “Kokutai (National sports festival of Japan)” in Autumn.

This year, it will hold this prefecture, Mie.

PEARLS has aimed another biggest purpose since they established.

I wish their dream comes true.

 

mie-pearls.com

 

www.youtube.com